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吉田潮「だからテレビはやめられない」

『マッサージ探偵ジョー』の荒唐無稽さが規格外だよ…逃げ恥も利用し、やりたい放題

文=吉田潮/ライター・イラストレーター

 土曜夜のテレビドラマは、比較対象としてはバランスがいい配置だとほくそえんでいる。事件モノでありながら、警察の人間が主役ではない、いわば「民間人モノ」なのだ。NHKは民間警備会社の身辺警備員(窪田正孝主演『4号警備』)、フジテレビは元刑事の民間調査員(玉山鉄二主演「『犯罪症候群Season1』)、そしてひときわ脱力感とゆるさを発揮するのが、テレビ東京のあん摩マッサージ指圧師、中丸雄一主演の『マッサージ探偵ジョー』である。警察モノは大ヒットが難しく、ドラマ界も必死である。民間人起用に。

 中丸はコミュ障だが国家資格保持者で、体を触る、あるいはツボを押せば、心身の状態や過去の状況などを見破ることができるという設定。そのゆるさに笑ってしまうのだが、よくよく聞いていると、ツボを介した見立てに案外説得力がある(ような気がする)。初回は、出張マッサージに行かされ、欲求不満気味のセレブ夫人(今回、ひと肌脱いで裸体をさらした横山めぐみ)をマッサージ。その夫が殺された事件を、容疑者を並べて体に触れて解明するっつう暴挙。始まっている土曜ドラマのなかで、最も荒唐無稽でスッポコ(すっとこどっこいのへっぽこ)である。

 中丸は探偵ではないのだが、タイトルには探偵とある。そのエクスキューズとして、冒頭で過去のドラマをうっすら想起させて「何でも探偵にすればいいってもんじゃない」とツッコミも入れる。シャーロック・ホームズ、ポアロ、金田一耕助といった名探偵のほか、『金田一少年の事件簿』『名探偵コナン』『ガリレオ』『家政夫のミタゾノ』『ビブリア古書堂の事件手帖』『掟上今日子の備忘録』『鍵のかかった部屋』『日曜劇場99.9―刑事専門弁護士―』を紹介。あら、よく見たらジャニーズタレント主演作がやたら多いわね……。テレ東も忖度するんだな!

 で、中丸が人嫌い克服のために使う人体模型は「平匡さん」。ん? 逃げ恥オマージュだね、とちょいちょいテレ東らしい「他局をいいように使い倒す」戦法もまた楽し。警視庁の刑事役として、やや浮かれぎみで悪ノリが懸念される小澤征悦と和田正人も登場。シリアスな役ばかりだと、こういう無責任な役が楽しいんだと思われる。

 決して話題沸騰とまではいかない、微妙な立ち位置をすんなりと手に入れるテレ東ドラマ。全国放送ではない憂いを逆手にとって好き勝手やっとるなという印象である。
(文=吉田潮/ライター・イラストレーター)

吉田潮

吉田潮

ライター・イラストレーター。法政大学卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。「週刊新潮」(新潮社)で「TVふうーん録」を連載中。東京新聞でコラム「風向計」執筆。著書に『幸せな離婚』(生活文化出版)、『TV大人の視聴』(講談社)などがある。

Twitter:@yoshidaushio

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