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三上洋「IT漂流時代」

Ustream消滅の今、理由の徹底検証からライブ配信乱立時代の生き残り策を考察

文=三上洋/ITジャーナリスト、ノダタケオ/ライブメディアクリエイター
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 16年に入り、スマホでのライブ配信サービスが激増。後発のライブ配信サービスに著名で人気だった配信者を奪われている印象を受けます。その要因のひとつに、本連載前回記事で挙げた「契約を結び、インセンティブを払うことによる配信者の取り合い」があります。スマホでのライブ配信サービスの絶対王者、ツイキャスの具体的な巻き返しは正直まだ見えていません。その方向性は今後注視する必要がありそうです。

(3)FRESH!(FRESH! by CyberAgent)

 サイバーエージェントが運営する「FRESH!」は、Ustreamに足りなかったところをうまく補完するかたちで16年から始まった後発のサービスのひとつです。サービス開始当初はテレビ朝日との出資で生まれた「AbemaTV」との連携がありましたが、サービス名称が「FRESH!(FRESH! by CyberAgent)」へと変わり、現在はAbemaTVの運営とは切り離されています。

 AbemaTVは「17年3月時点でダウンロード数が1500万を突破」(プレスリリースより)し、無料で楽しめるインターネットテレビ局としての賑わいがありますが、一方、FRESH!はライブ配信サービスとしての賑わいが足りない印象を受けます。アニメやドラマなどの「既存コンテンツ」の配信や「自主制作番組コンテンツ」を作り出すことでAbemaTVのユーザーをFRESH!へ流すことがなくなったいま、その後の展開は不透明であると感じます。

(4)LINE LIVE

 LINEはいわずと知れた今では最大の「コミュニケーションアプリ」です。幅広い世代から多くのユーザー数を持つLINEは、「LINE LIVE」というライブ配信サービスを15年につくりました。LINEがもつ圧倒的なユーザー数を基に、特に若い世代のユーザーに広がっています。

 ただ、これまでLINE LIVEは、TwitterやFacebookと異なり「クローズドなソーシャルメディア」であるLINEのアカウントが基本であったことから、ライブ配信をきっかけにつながった人とのコミュニケーション形成が難しいものでした。ところが、先日、LINE LIVEはLINEアカウントを必要とせず、ソーシャルメディア「Twitter」のアカウントでの利用が可能になりました。今後のLINE LIVEは、Twitterとの連携によるコミュニケーションの新しい広がりに期待が持てそうです。

(5)Twitter(Periscope)&Facebook Live

 TwitterやFacebookはソーシャル・ネットワーキング・サービスの特徴のひとつとして、「Periscope」「Facebook Live」というライブ機能を提供し始めました。これによって「ライブ配信」という仕組みが、より一般の人にも認知されるきっかけになっていると感じます。

 ただ、これまでのライブ配信サービスはTwitterやFacebookとの密接な関係性によって発展をしてきました。これが、TwitterやFacebookがライブ機能を提供し始めたことによって、TwitterやFacebookから追い出されるかたちにつながりかねません。この動きは他のライブ配信サービスに影響を与えるのか、与えないのかを見守る必要があります。

(6)YouTube Live

 動画共有サービス「YouTube」は撮影・編集した動画コンテンツをアップロードできる場所としてだけでなく、ライブ配信機能「YouTube Live」も提供しています。YouTube Liveの最大の利点は、絶対的な知名度がありユーザー数も多い動画共有サービス「YouTube」のコンテンツとして(ライブ配信終了後にファイルをアップロードすることなく)チャンネルへ保持できること。

 現在ではスマホによるライブ配信も一部のYouTubeクリエーターに対してのみ機能提供をしているところですが、将来的にはすべてのクリエーターに広がるでしょう。すべてのクリエーターが利用可能になると、これまでのライブ配信サービスの勢力図が変わる可能性も。それは、いかに早い段階ですべてのクリエーターが利用可能となるかにかかっていそうです。

なぜUstreamが消滅することになったのかを改めて考える必要性

 一時代をつくったUstreamは、黎明期前半の10年から12年はライブ配信サービスの代表格でした。しかし、その後はニコ生やツイキャスに追い抜かれ、最終的には「Ustream」というブランド名も消えることになります。

 スマホファースト時代に乗り遅れたことや、サービスとして存続するためのマネタイズができなかったことなど、多くのことがこれまで指摘されていますが、ひとえに、そのサービスの賑わいをつくっていた配信者と視聴者双方の声をピックアップして、それを反映し、変化していくことができなかったということ。それが、先の「ライブ配信サービスへ求められる3要件」を満たすことができなくなり、「賑わい」をなくすことにつながっています。

 ライブ配信サービス全盛期を目前にUstreamがなぜ日本から撤退し、ブランドが消滅することになったか? 今存在する黎明期からのサービスだけでなく、全盛期から始まったサービスも改めて見直す必要があるのではないでしょうか。
(文=三上洋/ITジャーナリスト、ノダタケオ/ライブメディアクリエイター)

三上洋/ITジャーナリスト

三上洋/ITジャーナリスト

1965年、東京都生まれ。東洋大学社会学部を卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、1995年から、IT全般を専門とするITジャーナリストとして活躍。文教大学情報学部でSNSやネットビジネスの講義を行う他、テレビ・ラジオでのセキュリティ解説多数。
ITジャーナリスト・三上洋のWebサイト

Twitter:@mikamiyoh

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