
4月1日、日本航空が羽田-米ニューヨーク(NY)線を開設した。全日空に遅れること半年となる。遅れた理由は、政府が2012年8月、日本航空に対する公的支援で航空会社間の競争環境が不適切に歪められることがあってはならないとして、17年3月31日まで日本航空の新規投資と路線開設を制限したからだ。これは、「日本航空の企業再生への対応について」と題する文書で通達されたため、通達日の8月10日をとって「8.10ペーパー」とも呼ばれている。政府はこの指針に基づき、それまで均等だった羽田空港の国際線発着枠を、全日空により多く配分する傾斜配分を実施した。
その結果、首都圏の多くの利用者にとって至極至便な羽田空港の国際線便数は、全日空が圧倒的に日本航空を上回る。深夜早朝時間帯の便数を除いて、全日空は週間27便で、日本航空の18便の1.5倍も多い。
羽田空港は、年間7950万人が利用する世界第5位の大規模空港だ。10年10月に第4滑走路が供用開始され、空港能力としてカウントされる発着回数が年間44.7万回(うち国際線9万回)に拡大したが、それでも航空会社の乗入れ希望に対応することができず、現在でも依然として厳しい発着回数不足が継続している。羽田空港の発着回数の価値は、2発着(1便の運航に必要となる離陸と着陸の合計)当たり20億円といわれている所以である。

つい最近、スカンジナビア航空(SAS)がロンドン ヒースロー空港(世界第7位)に保有する4発着枠を、7,500万ドル(約86億円)で大手航空会社に売却したが、それを参考にすると羽田発着枠の価値は20億円どころかその倍以上もあるとしてもおかしくない。この貴重な羽田の発着枠を、全日空は国際線で全体の29%保有している。それに対して日本航空は18%と少ない。
一方、国内線では全日空は38%、日本航空は39%とほぼ拮抗する。ただし全日空はAIRDO、ソラシドエア、スターフライヤー【編註1】とコードシェアを実施して、3社の座席数のおよそ半分を自社便として販売しているので、これら3社の発着回数の半分を全日空の発着枠と見なすのが適当である。
そうすると、全日空の国内線発着回数のシェアは46%に上昇し、日本航空の39%を大きく引き離すことになる。仮に全日空が15年9月に出資(16.5%)したスカイマークともコードシェアを実施した場合、全日空のシェアはなんと50%以上にもなる。

不公平な競争環境
こうした現状は、不公平な競争環境をつくりだしていないのであろうか。あるいは、政府が日本航空との競争環境是正のために全日空に傾斜配分した発着枠は、政府が全日空に無償で贈与した無形固定資産の補助に相当しないのかという指摘もある。仮に政府が全日空の国際線に傾斜配分した発着枠を資産評価すると、前述の2発着の価値をベースに試算すると、およそ180~360億円と推定される(<全日空の国際線便数-日本航空の国際線便数>× 20~40億円)。これは、公金3500億円を使用して企業再生した日本航空との間の不公平な競争を是正するよう全日空が政府に陳情し、年間180~360億円相当もの政府補助を巧みに引き出したといえなくもない。