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新見正則「医療の極論、常識、非常識」

X線検査やCTスキャン、放射線で発がん性&寿命短縮の可能性を考察

文=新見正則/医学博士、医師
X線検査やCTスキャン、放射線で発がん性&寿命短縮の可能性を考察の画像1「Thinkstock」より

 今回は画像診断のお話です。“極論君”は検査をしてもらうのが大好きです。画像診断も大好きです。胸やお腹のX線写真、頭や胸、お腹のCT検査、そしてMRI検査、また超音波検査も、人間ドックではもちろんのこと、少々不調の時などは、クリニックや病院に行ってできる限りの検査をお願いするというタイプです。

“常識君”の解説です。

「画像診断とは通常は形態の変化を画像でとらえて診断する方法です。その結果も画像として説明することができます。X線検査もそれに当たります。X線検査は別名がレントゲン検査で、開発者はヴェルヘルム・レントゲン。1901年に第1回のノーベル物理学賞を受賞しています。X線検査が登場して、それまでは身体の内部を調べるのは、皮膚から触ってわかる病変を見つける、つまり触診検査だけであったものが、なんとX線を当てることで身体の内部構造がある程度わかるようになりました。骨折を調べるためのX線検査は今でも頻繁に行われています。胸やお腹の単純なX線写真も、日常診療では必須のものです。骨はX線検査で描出されやすく、そこで骨折の診断には威力を発揮します。また、胸部写真では心臓の大きさや肺炎の有無、肺がんの有無などがある程度わかります。それ以前は身体の中の構造を知る検査はなかったわけですから、ものすごい進歩です」

 ここで“非常識君”の質問です。

「X線検査は放射線を浴びます。ですから、発がん性が気になるのです。放射線障害は広島や長崎に落とされた原子力爆弾で有名になり、そして東日本大震災での東京電力福島原子力発電所からの放射線漏れがいまだに続いています。そんな放射線と同じものなのだから、身体に害があるはずです」

 常識君のコメントです。

「福島原発の破損している格納容器内は、先日毎時530シーベルトという放射線量が記録されたそうです。人間なら数十秒で死に至る放射線量だそうです。ところが、胸部X線写真では1回当たり0.02ミリシーベルト前後です。1000ミリシーベルトが1シーベルトですから、(530/0.02)×1000 = 約2500万回の胸部X線写真を1時間で撮影するのと同じ状態になります。福島原発の格納容器内はとんでもない放射線量ですから、それと比べても極わずかと理解できます」

CTスキャン

 非常識君の質問です。

「CTスキャンでは、どれぐらいの被曝なのですか?」

 常識君の回答です。

「CTスキャンは、たくさんのX線写真を連続撮影して、それをコンピューターで再構成して平面画像や、最近は立体画像で供覧する方法です。結局はX線撮影の延長ですから、被曝量は胸部X線写真の数百回分ともいわれます。それでも、福島原発の格納容器内に1時間いたときの10万分の1です」

 非常識君の意見です。

「史上最悪の事故といわれている福島原子力発電所の格納容器内と比べてもらっても、ピンときません。もう少しわかりやすい喩えはありませんか?」

 常識君の回答です。

「日本と欧米を飛行機で往復すると、約0.2ミリシーベルト被曝するといわれています。季節や高度などにもよりますが、概ねそのような値です。胸部X線写真10枚分と同じということになります。航空会社の管理目標も、航空乗務員の被曝量は年間5ミリシーベルト以下とするようになっています」

 非常識君の質問です。

「すると、CTスキャンは1検査当たり20ミリシーベルト前後といわれていますから、航空会社の年間の管理目標をはるかに超えているということですね」

健康への影響は不明

 極論君の意見です。

「爆心地近くで原子爆弾に被災しても、発がんせずに生き延びた人もいます。被災地にすぐに救護に向かって、その後健康に過ごした人もいます。何がどれくらい身体に悪いかは、実は不明です。そうであれば、あきらかに危険という値でないのであれば、病気の早期発見のために、希望者はどんどんとCT検査を受けるべきでしょう。CT検査による発がんの可能性はゼロではないにしても、有益性を考慮すればまったく無視できる範囲だと思います」

 非常識君の意見です。

「被曝が心配であれば、放射線を使用しない超音波検査やMRI検査を利用すればいいですね。しかし、MRI検査はCT検査に比べて時間もかかるし、うるさいし、また身体中に金属があれば撮影できないこともあるし、制約が多い検査です。臨機応変に検査を使い分ければいいのではないでしょうか」

 最後に常識君のコメントです。

「日本の人口当たりのCT普及率は、欧米の数倍といわれています。そして撮影回数も欧米に比べればはるかに頻回です。そんな状況が早期発見につながって健康に役に立っているのか、それとも極軽度ながら放射線障害が積み重なって、将来の寿命が短くなるのか、現状では不明です。そんな疑問に答えるためにも、検査歴はビッグデータ化して、将来検討する必要があると思っています」

新見正則/医学博士・医師

新見正則/医学博士・医師

1959年生まれ
1985年 慶應義塾大学医学部卒業
1985年~ 慶應義塾大学医学部外科
1993~1998年 英国オックスフォード大学医学部博士課程
1998年~ 帝京大学医学部外科に勤務

 幅広い知識を持つ臨床医で、移植免疫学のサイエンティスト、そしてセカンドオピニオンのパイオニアで、モダン・カンポウやメディカルヨガの啓蒙者、趣味はトライアスロン。著書多数。なお、診察希望者は帝京大学医学部付属病院または公益財団法人愛世会愛誠病院で受診してください。大学病院は紹介状が必要です。

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