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牧野知弘「ニッポンの不動産の難点」

多額ローン払い手に入れたマイホーム、厄介な負の財産化…売却できず毎年多額の費用負担

文=牧野知弘/オラガ総研代表取締役

 都心部に住む子供世帯にとっては、今や郊外にある親の家は、以前都会に出て暮らし始めた地方出身の人にとって地方の実家がだんだん遠い存在となり、親の亡くなったあとではまったく「必要のない家」となっていったのと同様に、郊外の家も親から引き継がれても扱いに困ってしまう厄介な存在に映り始めているのだ。

 以前であれば、家は一家にとっての財産。自分が使わなくとも不動産は使い勝手の良いものだった。人に貸せば家賃収入が入ってくる、家屋を取り壊して更地にすれば、駐車場やアパートに建て替えることで副収入源にもなる。いざとなれば売却すれば現金にも様変わりして、ひと財産になったからだ。

 ところが、今は人口が減少して高齢者ばかりの郊外住宅地では、家を貸す先もなければ、売却しても思ったような価格では売れない、それどころか全く買手が付かないエリアまで出始めている。

 こんな家を相続しても「困ってしまう」のが実情だ。家はそのまま所有していても多くのお金がかかるからだ。都市郊外部の住宅地であれば、ちょっとした戸建て住宅であれば、固定資産税は都市計画税などを含めれば年間で15万円ほどかかる。家の管理や庭木の剪定などの費用もばかにならない。ましてや古くなった家を解体すれば解体費は一軒あたり、大きさにもよるが150万円から200万円もかかる。解体後はちゃんと活用しなければ固定資産税は翌年から住宅用の特例が外され、敷地面積200平方メートル以下であれば、税額は6倍に跳ね上がってしまうことになる。

 お父さんが住宅ローンの返済に耐えてやっと手に入れたマイホームが、皮肉なことに子供たちにとっては、ただその土地を維持管理するだけで毎年100万円もの負担を強いられる「負動産」になる可能性だってあるのだ。

 そんな家は「お願いだからいらないです」――。

 これが最近の相続の現場でのセリフということになる。そんなものに多額のお金を注ぎ込んできた天国のお父さんは、相続現場でのこのセリフを聞いて何を思うのだろうか。

 家に対する価値観が、どうやら大きく変わってきたようだ。
(文=牧野知弘/オラガ総研代表取締役)

牧野知弘/オラガ総研代表取締役

牧野知弘/オラガ総研代表取締役

オラガ総研代表取締役。金融・経営コンサルティング、不動産運用から証券化まで、幅広いキャリアを持つ。 また、三井ガーデンホテルにおいてホテルの企画・運営にも関わり、経営改善、リノベーション事業、コスト削減等を実践。ホテル事業を不動産運用の一環と位置付け、「不動産の中で最も運用の難しい事業のひとつ」であるホテル事業を、その根本から見直し、複眼的視点でクライアントの悩みに応える。
オラガ総研株式会社

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