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木村隆志「現代放送のミカタ」

『母になる』沢尻エリカ、圧巻のジェットコースター演技でズバ抜けた才能見せつける

文=木村隆志/テレビ・ドラマ解説者、コラムニスト
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“「別に」騒動”後は、映画『ヘルタースケルター』(アスミック・エース)やドラマ『ファーストクラス』(フジテレビ系)シリーズなど強い女の役柄が多かったが、もともとは「儚げな悲劇のヒロイン」が似合う女優であり、見る側の心を揺さぶってくれる。

 1話だけで、故郷の北海道時代から、恋愛と結婚、出産と子育て、誘拐事件と離婚、突然の再会までのさまざまな時期を演じ分けたことを見ても、いかに沢尻の演技が優れているかがわかるだろう。1話のなかで感情がジェットコースターのように上下するヒロインを違和感なく演じられるのだから、やはりその才能はズバ抜けている。

沢尻エリカと小池栄子の静かなバトルも見もの

 今後の見どころは、誘拐された3歳の広と出会い、7年もの間、母親として育てた麻子を含めた三角関係。しかし、麻子の描き方が難しい。“モンスター女”としてエキセントリックに描いても、「彼女も追い込まれていて仕方なかった」と同情ムードで描いても、ともに白々しく共感を集められないからだ。

 2話で、麻子が広にあてた手紙には、「新しいお母さんと名乗る人に、ちゃんとごあいさつするのよ。『お母さん会いたかった』って。できたら涙ぐんだりするほうがいいかもしれない」「何も知らないおばさんがいきなり現れてお母さんだと言うの。怖いね。でも優しくしてあげなさい」「いい子にして待っていてください。広が会いたいと願えばママは会いに行きます」「ママは広の心の中で生きてます。広、大切な愛しい我が子。あなたのママ麻子より」などと書かれていた。

 抑えられない情念を冷静さで覆い隠すような手紙は、まさに絶妙のさじ加減。沢尻も小池も世代屈指の演技派だけに、バチバチやり合うのではなく、静かに心を削り合うような戦いになったほうがドラマは盛り上がるのではないか。

ヒロイン・沢尻エリカがすべてを許すまでの物語

 話を戻すと、同作の評価を左右するのは、やはり制作サイドがどれだけ沢尻のポテンシャルを引き出せるかだろう。単に母と息子の絆や、実の母と育ての親のバトルを描くだけでは物足りない。結衣が、誘拐犯、勝手に育てた麻子、守ってくれなかった陽一、そして何より自らを許せるようになるまでの過程もきっちり見せてほしいところだ。

 確かに、荒唐無稽かつどこかで見たような設定は若干気になるが、沢尻ならそんなことを忘れさせてくれるかも……という期待感もある。「水曜ドラマ」には、前述した松雪泰子主演の『Mother』、満島ひかり主演の『Woman』など母子関係を描いた名作もあるだけに、ヒロインと子役の演技やセリフを比較しながら楽しむのも、また一興だろう。
(文=木村隆志/テレビ・ドラマ解説者、コラムニスト)

●木村隆志(きむら・たかし)
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月20~25本のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』(フジテレビ系)、『TBSレビュー』(TBS系)などに出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。

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