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世界のエコカー技術を担う「地味だけど世界最先端」の日本企業…最新自動車業界解説

文=和島英樹/ラジオNIKKEI記者

 環境に優しい車といえば、ガソリンと電気を併用するハイブリッド車(HV)、家庭用電源で充電でき、よりモーターで走るプラグインハイブリッド車(PHV)、電気自動車(EV)、水素などで自らが発電しながら走る燃料電池車などがある。HV、PHV、EVは電動でモーターを使うパターンだ。EVではリチウムイオン電池などが注目されがちだが、多くの環境対応車が使うのはモーター。そのモーターの技術力で、世界の注目を集める企業が三井ハイテックだ。

 同社は金型の超精密加工に高い評価を得ている。金型技術を生かし、ICリードフレーム、モーターコアに事業展開している。

 リードフレームとは、半導体パッケージの内部配線として使われる薄板の金属のことで、外部と電気信号を橋渡しする役目を果たすもの。半導体パッケージの大部分にリードフレームが使われている。モーターコアは、家電や環境対応自動車で使われるモーターの中核部品で、モーターの特性を上げるためのローター(回転部分)、ステーター(ローターを回転させるための力を発生させる部品)などから構成される。

 家電などのモーターは、家電メーカーがモーターコアまで含めて内製化している。三井ハイテックに依頼がくるのは、規格外で難易度の高いもの。同社が金型技術で培ったノウハウで対応してきた。

 同社では1974年にモーターコアの生産性向上を図るために開発したシステムであるMACシステム(Mitsui Automatic Core assembly system)を開発した。これは打ち抜きから計量、積層、かしめ(結束)までを一貫して自動で行うことができる画期的なもので、製造工程の大幅な短縮が可能になった。結果、生産性や品質が向上し、さまざまな形状に対応が可能になった。かつては家電など向けだったが、環境対応自動車の普及により、車載分野で大きく花を開こうとしている。

米国ZEV規制

 米カリフォルニア州では環境にやさしいゼロエミッションビークル(ZEV=環境負荷のない車)の販売促進策を実施しており、2018年からはHVはZEVから除外される。同州以外の9州も追随する見通し。今後はPHVやEVの普及が加速する公算が大きい。また、大気汚染が深刻な中国では、20年にEVやEVバスの生産累計500万台(15年までは48万台)を目指している。

 モーターコア事業では、カナダの新工場でも今年5月に生産を開始する予定。18年1月期は立ち上げ費用が先行し赤字だが、数年内に100億円の売り上げを目指している。現在は環境対応車で先行する国内のトヨタ自動車、日産自動車、ホンダが納入先だが、海外メーカーへの採用も働きかける。

 米国への輸出で税が優遇されているカナダでの展開は、テスラなどへの納入をにらんだものともみられるが、三井ハイテックは「秘守義務があり、取引先については一切答えられない」としている。

 しかし、同社のモーターコア技術は世界最先端で、車の性能向上、燃費改善に有効。採用される公算が大きい。国内のほか、中国などでも増産投資を行い、幅広い受注に対応する方針。同社の業績も今後、飛躍的な拡大が見込まれる。

 同社の17年1月期の営業利益は18億円だが、銀行系証券のアナリストは「19年1月期には47億円に達する」と試算している。設備投資負担をこなしての数字だ。投資が一巡し、EVなどの普及が本格化するとみられる20年以降も伸びが期待される。
(文=和島英樹/ラジオNIKKEI記者)

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