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米山秀隆「不動産の真実」

全国の住宅、3割が空き家に…寿命も米国の半分で長期使用困難、自治体の強制手段も要検討

文=米山秀隆/富士通総研主席研究員
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 日本では戦後、高度成長期の住宅不足に対応するため街を広げ、新築を大量に造ってきたが、一転して人口、世帯が減少に向かうようになると、条件の悪い地域から引き継ぎ手がなく、空き家が増えるようになっている。短期間で建て替えることが前提で住宅寿命が長くなく、使うに使えないという事情もある。

 このような日本と欧米の住宅市場の違いはあるが、欧米各国でも空き家対策は講じられている。イギリスでは空き家が増えた場合の問題として、近隣への悪影響のほか、市場に空き家が放出されず住宅供給が不足するという点が認識されている。改修の補助金、長期間空き家になった場合の付加税などの施策がある。フランスでも空き家増加が住宅供給を阻害するとの考えから空き家への課税がなされている。空き家増加が住宅供給不足の原因になる状況は、日本で空き家の市場供給がなくても住宅供給がだぶついている状況とはまったく異なる。

ドイツ、アメリカの強制手段

 ドイツにおいては、古く小規模な住宅が多く、人口が減少傾向にある旧東ドイツ地域を中心に空き家率が高くなっている。ドイツでは、建物が不良な状態になった場合に修繕命令や解体命令を出すことができる。改修費用は改修で建物の価値が上がる範囲で負担しなければならないが、補助の仕組みもある。解体費用は、解体で土地の価値が上がるなど利益が得られる範囲で負担を求められるが、逆に不利益を受ける場合は、行政が補償や買い取りを求められる場合もある。このほか、行政が一定条件の下で認められる先買権を行使して解体や再利用を行ったり、あるいは代執行したりする場合もある。

 アメリカにおいては、かつて鉄鋼業で栄えた五大湖南部のラストベルト(錆びついた工業地帯)と呼ばれる地域の衰退が著しい。これら地域では空き家率が高く、空き家対策が積極的に行われている。

 オハイオ州ヤングスタウンの例をとると、対象となる物件があると、所有者に修理ないし解体する必要がある旨通知をし、30日間の猶予を置いても返答がないか修理されなかった場合には市が解体する。解体費用は所有者に請求され、支払いがない場合は、土地は市の所有となる。ただ、支払わず市の所有になるケースでは、所有者の今後の信用にもかかわるため、所有者が市に譲渡する道もある。市の所有となった土地の利用方法については市のランドバンクが判断する。なお、固定資産税の支払いを2年間滞納したケースでは、取り壊さなくてもランドバンクの所有になる。

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11:30更新
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