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稀勢の里、重傷でも強行出場&優勝が「美談」の危険さ…若い力士がケガで休めなくなる恐れ

文=石丸かずみ/ノンフィクションライター
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「『脱臼癖』という言葉がありますが、まさにそれが後遺症です。これはイメージですが、一度関節が抜けてしまうと、そこに道ができてしまい抜けやすくなる。しっかり治療しないまま放置していると、どんなに筋肉をつけてカバーしたとしても、脱臼を繰り返すことで、その道が舗装されるような感じになってしまい、寝返りを打っただけでも外れてしまうようになる。そういった事例を数多く知っています」(平賀氏)

 ケガの急性期は、骨折の有無にかかわらず熱を持つケースがほとんどだ。それは、炎症を起こしている証拠である。炎症を抑えるには、代謝を抑える必要がある。つまり、「動かさずに、とにかく安静にする」というのが最良の対処なのである。

「関節は消耗品だということを、しっかり頭にたたき込んでほしいです。使えば使うほど鍛えられるのではなく、正しくケアをしないと、どんどん削れてなくなってしまうものです。アスリートにとって、ケガをしたら休むということも大切な仕事だと思ってほしいです」(同)

 特に若いうちは、たとえケガをしても体が動いてしまう。しかし、そこで無理をすると選手生命が脅かされるだけでなく、引退後も尾を引くこともある。確かに、プロには「“勝負どころ”で無理をすべき」という矜持もあるだろう。しかし、アマチュアであってもプロであっても、とりわけ若い選手に対しては「無理は禁物」という教育も必要である。

ラグビーは“魔法の水”から科学的見地の時代へ

 フィールドスポーツでありながらコンタクトスポーツでもあるラグビーでは、ケガに対して「無関心」で「鈍感」ともいえる時代があった。そのために、致命的な事故が起こることもあったが、その反省からか、現在は科学的見地に基づいたルールづくりが行われている。

 ラグビーの国際的統括組織「ワールドラグビー」は、一般向けガイドラインで脳震盪に関して「疑わしければ、退場させる」としており、さらに「脳振盪の疑いがあるアスリートはすべて、適切な救急対応の手順に従って、ただちにプレーをやめさせること。一旦、受傷したプレーヤーについて安全な形でプレーをやめさせたら、その日は活動に復帰させてはならない。また、医学的な評価を受けるまで復帰させてはならない」と明記している。フラフラの選手に冷たい水をかけて試合を続けさせる……、そんな“魔法の水”の時代ではないのである。

 また、ある循環器の医師も「どんな状況であっても、最悪を想定して逆算して考えてほしい。だから、『大きなケガをしたら引退しなければならない』ということを考えて、ケガをしづらいように体を鍛えて、それでもケガをしたら、軽いうちにしっかりと休んで治してほしい」と語る。

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