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湯之上隆「電機・半導体業界こぼれ話」

【没落する日本の半導体業界に激震の告発】坂本さん、エルピーダを潰したのはあなただ

文=湯之上隆/微細加工研究所所長
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 それは、過剰技術で過剰品質をつくっていることについては、私が同志社大学の経営学の教員だった頃、坂本社長(当時)の許可を得て04年5月にエルピーダを調査した結果、発見したことだったからである。

 具体的には、エルピーダは5年ほどもてばいいPC用に、メインフレームメーカーから要求されていた25年保証という過剰品質のDRAMを過剰技術でつくっているということを明らかになった。記事ではいつの間にか、25年保証が50年保証になっていることにも、笑わずにはいられなかった。

「悪弊」が改められた形跡なし

 私は、この調査結果を04年5月に坂本社長へ直接報告した。ところが、坂本社長は私のこの報告を無視したのである。それどころか、私は危険人物とみなされて研究中止を命じられ、その上にエルピーダへの出入りも禁止されてしまった。この事態は同志社大学にも知られることとなり、結果的にはこれで上層部に睨まれて、同志社大学をやめる羽目になったのである。

 ところが坂本氏はインタビューで、私が発見し報告した事柄を、さも自分の説のように平然と述べているのである。私としては笑うしかないではないか。

 加えて、「CEO就任後にすぐにこの悪弊を改めた」という発言は見過ごすことができない。なぜなら、これは明らかなウソだからだ。というのは、エルピーダに出入り禁止になった後も、私はかつての腹心の部下たちと連絡を取り合っており、その「悪弊」が改められた形跡がなかったことを知っているからである。

 それどころか、もっとヒドイことになっていた。当時最先端のDRAMは512Mビットだったが、サムスン電子などの韓国勢のマスク枚数は20~25枚、マイクロンのマスク枚数は20枚以下だった。ところが、エルピーダのマスク枚数は、なんと43枚にも及んでいた。

 マスク枚数が多いということは、プロセスフローが長いということであり、製造装置の台数が多いということになる。その結果、DRAMの原価が跳ね上がり、利益が出なくなる。さらに、エルピーダの製造装置のスループット(生産効率)は、サムスン電子より明らかに悪く(私が調査した結果ではサムスン電子の半分)、その上、DRAMのチップサイズがサムスン電子の1.5倍になっていた。そして、DRAMの検査工程に至っては、サムスン電子の10倍近くあり、十数人在籍していた三菱の技術者たちは「狂っている」とまで言った。そして彼らは、「エルピーダは、世界一高価な技術を世界一過剰に使って世界一高価なDRAMをつくっている」と証言した(もちろん、このことも坂本社長に伝えた)。この辺りの詳しい経緯は、拙著『「電機・半導体」大崩壊の教訓』(日本文芸社)の54~101ページに記載した(図1)。もし、私の話が信用できないという方がいるなら、同書を読んでいただきたい。