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さんきゅう倉田「税務調査の与太話」

「あいつらは嘘をつく生き物」…税務署、70代老夫婦に突然に数百万円の追徴課税

文=さんきゅう倉田/元国税職員、お笑い芸人
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「あいつらは嘘をつく生き物」…税務署、70代老夫婦に突然に数百万円の追徴課税の画像1「Thinkstock」より

 元国税局職員で現在お笑い芸人の「さんきゅう倉田」です。注目しているサッカー選手はスペイン・FCバルセロナの「リオネル・メッシ」です。

 ぼくの担当していた法人税の税務調査では、基本的には法人の本店所在地に臨場して2日間の税務調査を行います。例外的に、税務署に来てもらって、持参していただいた書類をもとに調査をすることがあります。今回は、そんなお話。

 むかしむかし、まだ国家公務員が一種と二種に分けられていた頃、焼きそば店の税務調査を行いました。その焼きそば店は、70代のおじいさんがデパート屋上のプレイランド脇でひっそりと営業していて、売り上げは雀の涙ほど。零細企業という概念にすら当てはまらないような店でした。

 確定申告書を見ると、役員に300万円ほどの退職金を支給していました。退職金は30年ほど前から、保険会社を通じて積み立てていて、退職したのをきっかけに保険会社から支払われていました。退職金は一定金額以内であれば、所得税がかからず、満額が役員の手元に残ります。ただ、確定申告書を見ていて気づいたのですが、役員報酬の一覧に退職したはずの役員の名前がありました。3年前に退職したあとも、毎月役員報酬を受け取っているようです。こうなると、退職が事実と異なると疑う相当の蓋然性があります。そこで社長を呼び出して、話を聞くことにしました。

 やってきた社長は、よれよれのポロシャツにところどころ穴の空いた作業ズボン、やせ細った身体で、長年の苦労が浮き出ているようでした。社長に話を聞くと、「退職したとされる役員は自分の妻で、確かに退職はしていない。ただ、積み立てていた退職金は受け取って、すべて家の補修に使ってしまった。金はない」とのことです。

 当時の税法を確認し、この退職金は法人の収入として益金に算入しました。また、役員に対する報酬は、この場合、損金にできないため、認定賞与として処理しました。基本的には、定期同額給与か事前確定届出給与が損金に算入されます。簡単にいうと、退職金として保険会社から受け取ったお金は、すべて会社の収入となって法人税の対象になります。また、同額が社長の奥さんの所得税の対象となります。

巨額の追徴課税

 納税額が決定してから、社長に再び来署してもらい、このような会話を交わしました。

社長「そんな大金は払えんです。預金通帳も見たでしょう。とてもじゃないけれど払えんです」
ぼく「法律に基づいた、仕方のないことなので」
社長「無理です、無理です。なんとかならんですかぁ。もう、首を吊るしかないです。助けてもらえんもんですかぁ」

さんきゅう倉田/元国税局職員、お笑い芸人

さんきゅう倉田/元国税局職員、お笑い芸人

大学卒業後、国税専門官試験を受けて合格し国税庁職員として東京国税局に入庁。法人税の調査などを行った。退職後、NSC東京校に入学し、現在お笑い芸人として活躍中。著書に『元国税局芸人が教える 読めば必ず得する税金の話』(総合法令出版)、『お金持ちがしない42のこと』(Kindle版)がある。
さんきゅう倉田公式ホームページ

Twitter:@thankyoukurata

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