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さんきゅう倉田「税務調査の与太話」

「あいつらは嘘をつく生き物」…税務署、70代老夫婦に突然に数百万円の追徴課税

文=さんきゅう倉田/元国税職員、お笑い芸人
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 社長は、齢が50は離れているであろう若造のぼくに、必死に頭を下げて頼みます。しかし、ぼくには見逃したり、譲歩するような権限や知識はなく、「決まったことですから」の一点張りしかできません。心苦しい気持ちに耐えられず、突き放して帰ってもらいました。

 社長の預金口座にお金がないことは、準備調査でわかっています。だから、追徴課税は分割で納付されると考えられます。つまり、国に借金をした状態です。あと何年働けるかもわからない70代の夫婦が、いきなり何百万円という借金を背負わされるのです。そう考えると、手が震え、足が竦みます。社長が帰ったあと、上司に相談しました。上司はぼくの話を聞いてから、切り捨てるように言いました。

「あいつらは嘘をつく生き物だから。『払えない』ということは、『払える』ってことだ。お前はまだ若いから、そのことがわからないんだ」

 ぼくは「でも、あのおじいさんは嘘をついていないと思います。本当に払えないんだと思うんです」と食い下がりました。すると上司は、「わかった。お前がそんなに言うなら半分でいい。今回は半分だけ否認しよう」と譲歩してくれたのです。

 ぼくは翌朝、そのことを伝えるために社長の自宅に向かいました。絶望している社長に、直接伝えたい――。それはぼくの自己満足だったのかもしれません。初めて行く社長の自宅付近で地図を広げて歩いていると、30mぐらい先の家から見覚えのあるおじいさんが出てきました。そう、社長です。

 社長は、税務署に来た時とは打って変わって、真っ黒なライダーススーツを着て赤いブーツ履き、ハーレーダビッドソンのバイクに乗って出てきたのです。

 ぼくは、それ以来、他人が信じられなくなりました。
(文=さんきゅう倉田/元国税職員、お笑い芸人)

さんきゅう倉田/元国税局職員、お笑い芸人

さんきゅう倉田/元国税局職員、お笑い芸人

大学卒業後、国税専門官試験を受けて合格し国税庁職員として東京国税局に入庁。法人税の調査などを行った。退職後、NSC東京校に入学し、現在お笑い芸人として活躍中。著書に『元国税局芸人が教える 読めば必ず得する税金の話』(総合法令出版)、『お金持ちがしない42のこと』(Kindle版)がある。
さんきゅう倉田公式ホームページ

Twitter:@thankyoukurata

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