ビジネスジャーナル > マネーニュース > ブームの老後資産形成、危険な注意点
NEW
大江英樹「おとなのマネー学・ライフ学」

ブームの老後資産形成術iDeCo、危険な注意点…最初の運用機関選びに失敗だと悲惨

文=大江英樹/オフィス・リベルタス代表
ブームの老後資産形成術iDeCo、危険な注意点…最初の運用機関選びに失敗だと悲惨の画像1「Thinkstock」より

 最近は個人型確定拠出年金iDeCo)がブームになりつつあります。1月から原則としてこの制度は誰でも利用できるようになったため一挙に加入者の数が増え、昨年末の加入者約30万人が、今年の3月末では43万人ですから、それまで15年間かかって30万人だったものがわずか3カ月で13万人も増えたことになります。恐らくは、今後も拡大傾向が続くと思われますので、今後iDeCoに加入しようと検討している人も多いだろうと思います。そこで、ぜひ気を付けていただきたいことがひとつあります。それは、どの運営管理機関を利用するかということです。

 iDeCoを利用する人は自分で運営管理機関を選ぶことになるわけですが、この選択が非常に重要なポイントになります。なぜなら、各業者によってサービス内容と価格、商品の質や種類がかなり異なること、そしてその運営管理機関選びに失敗しても、さまざまな理由によって容易に運営管理機関を変更することが難しいこと、という2つの理由があるからです。したがって、最初に選ぶ際に慎重に検討することが大切です。

 ところが、どこの運営管理機関を選べばいいのか、ということについて、一般の人はあまり詳しくありません。知名度や宣伝文句だけにつられて選んでしまうこともしばしば起こります。また、口座管理手数料が無料ということで安易に選んでしまうことになりがちですが、これはそれほど単純な話ではありません。そこで具体的にどうやって運営管理機関を選べばいいのか、そのポイントをお話したいと思います。

 ポイントは大きく分けて4つあります。

運用商品の種類

 まず初めは、「運用商品の種類」です。これは分散投資を行うために十分なカテゴリーが揃っているかどうかということです。一部の運営管理機関のなかには極端に偏ったプランもありますが、これはあまり好ましいとはいえません。長期に資産を運用しなければならないiDeCoにとっては、分散投資がきちんとできることが大前提ですから、そもそもそのような偏った運営管理機関は最初にふるい落とすべきでしょう。

運用商品の内容

 次に「運用商品の内容」です。上記のように種類の条件を十分に満たしているのであれば、これが最も重要なポイントだといえます。具体的にいえば投資信託の信託報酬(=運用管理費用)が多いか少ないかということです。iDeCoのように非常に長期にわたって運用することになる制度では、この運用管理費用の金額が運用成績に与える影響がとても大きくなるからです。いうまでもなく、これは安いほうが良いに決まっています。特に注意しなければならないのは、同じ運営管理機関のなかで同じカテゴリーの商品でも、この運用管理費用が何倍も違う商品が並べられている場合です。これは現在ではまだ商品の除外が簡単にはできないことから、昔からある高手数料商品が並んでしまっているというのが理由ですが、うっかりと高い費用の商品を選ばないように気を付けることが必要でしょう。

口座管理手数料

 そして3つめの「口座管理手数料」。これももちろん安いほうが良いのは当然なのですが、「運用管理費用」とこの「口座管理手数料」のどちらをより優先すべきかと考えた場合は、前者を優先すべきだと思います。なぜなら、この口座管理手数料は定額なので、初期の資産が少ない段階では割高に見えますが、資産が積み上がっていくとそれほどの負担感はなくなります。これに対して、運用管理費用などは残高が増えていくにしたがって絶対額も増加していきます。したがって、長期間にわたる運用を考えた場合は、運用管理費用をより優先して考えるべきだと私は考えます。

サービス内容

 そして最後は「サービス内容」です。ウェブサイトやコールセンターの使い勝手の良さ、そして最近では一部の運営管理機関では対面による説明をしてくれるところもあるようなので、他の条件が変わらなければ、こうしたサービスも運営管理機関を選ぶときの参考になるといえるでしょう。

 ひとつ注意しておくべきことは、ネット証券です。iDeCoについてはネット証券の人気が高いのですが、必ずしも一番良いとはいいきれません。普通の株式や投資信託の取引においてはネット証券が便利ですが、iDeCo の場合、皮肉なことにネット証券のウェブサイトやコールセンターは必ずしも使い勝手が良くないからです。逆にメガバンクや大手証券などはこうしたツールが使いやすいところが多いのです。

 どうしてそうなるのかということですが、こうした大手金融機関は従来から企業型確定拠出年金において要求の厳しい大企業のプランを受託してきたからです。このため、結果として加入者にとっての使いやすさはかなり優れているところが多いようです。

 結局、どこを選ぶのが良いのかは、人それぞれです。運用や制度にかなり詳しい人であればネット証券でも良いと思いますし、やはり対面で相談できないと不安だという初心者の方であれば、店舗で相談のできるところを選んだほうが便利でしょう。具体的にそういう運営管理機関を比較できるサイトもありますので、こうしたところを参考にしながら自分の基準に合ったところを選んでいくのがよいのではないでしょうか。
(文=大江英樹/オフィス・リベルタス代表)

【ご参考】運営管理機関比較サイト
iDeCoナビ」特定非営利活動法人 確定拠出年金教育協会 運営

大江英樹/経済コラムニスト

大江英樹/経済コラムニスト

1952年、大阪府生まれ。野村證券で個人資産運用業務や企業年金制度のコンサルティングなどに従事した後、2012年にオフィス・リベルタス設立。日本証券アナリスト協会検定会員、行動経済学会会員。資産運用やライフプラニング、行動経済学に関する講演・研修・執筆活動を行っている。『定年楽園』(きんざい)『その損の9割は避けられる』(三笠書房)『投資賢者の心理学』(日本経済新聞出版社)など著書多数。
株式会社オフィス・リベルタス

Twitter:@officelibertas

ブームの老後資産形成術iDeCo、危険な注意点…最初の運用機関選びに失敗だと悲惨のページです。ビジネスジャーナルは、マネー、, , , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!