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その異常な量の汗、病気の可能性…病院で短時間の治療で治るケースも

文=吉澤恵理/薬剤師
その異常な量の汗、病気の可能性…病院で短時間の治療で治るケースもの画像1「Thinkstock」より

 ビジネスパーソンにとって、身だしなみは重要なビジネススキルのひとつといえるだろう。しかし、どう身だしなみに気をつけても、暑い夏の汗は止められないと悩んでいる人も多いのではないだろうか。営業や大事な商談中に汗が吹き出てしまうなどという人にとっては、夏は恐怖の季節だろう。しかし、その汗、実は治療できるのだ。

 一般的に汗かきとは、運動をする、気温が高いなど、誰もが汗をかく状況で人より多く汗をかいてしまう人が当てはまる。これに対し多汗症は、発汗のシグナルを伝える交感神経が優位になることが原因となって起こる。手のひらや顔、頭部、脇、足の裏などの体の一部にのみ多量の発汗がみられる症状で、かつほかの人が汗をかかない状況にもかかわらず多量の汗をかくのが特徴だ。手汗を例に挙げると、指先からポタッとしたたるほどの汗をかく。多汗症は、日常生活に支障をきたす場面も多いといえる。

 多汗症は、身体の活動を活発にする「交感神経」の機能が、緊張や不安、過度のストレスにより優位になることが原因と考えられている。しかし、専門医のなかには、心因的なことは多汗症の原因ではないとの見解もあり、ハッキリとした原因は不明なケースがほとんどだ。また、ほかの病気が原因で多汗症になることもある。更年期障害、バセドウ病、自律神経失調症、糖尿病、急性リウマチなどが多汗症を引き起こすこともあるため、一度は医療機関を受診すべきだろう。

 市販薬では、塩化アルミニウム主成分の制汗剤、漢方の柴胡加竜骨牡蛎湯や柴胡桂枝乾姜湯が、効果の期待できる薬だが、購入の際は薬剤師に相談してほしい。

 医療機関を受診の際は、皮膚科が専門となる。内服薬による治療が可能で、抗コリン薬や漢方が処方される。抗コリン薬による制汗効果は顕著で薬が効いている間は、汗をかかなくなる。しかし、一方で体液の分泌全体が抑制されるため、目の乾き、口の乾きなどが起きるほか、本来は体温調節の役割を果たす汗が止まることで体温調節ができなくなり、体のほてりや顔が紅潮するなどの副作用にも注意が必要だ。

 また、神経を切断する外科的治療が有効な場合もある。代表的なものは、いわゆる脇汗と呼ばれる腋窩多汗症のボトックス注射がある。腋窩多汗症のボトックス注射は、2012年から健康保険適用となっており、治療が受けやすく効果もあるので、脇汗でお悩みであれば速やかな受診をお勧めする。その他の多汗症でも外科的治療がある。手のひらの多汗症では、胸腔鏡下交感神経遮断術の効果が高く、内視鏡を使って胸部交感神経を遮断する。入院の必要はなく、20~30分程度の手術時間が一般的だ。

 特に男性は、「汗で受診なんて」と躊躇するかもしれないが、皮膚科では汗が多いことで悩む患者の受診は多い。多汗症の人のなかには、長年悩みを抱えている人も少なくない。夏目前の今、悩むよりもまずは受診することをお勧めする。汗臭さもなく、夏でも活動的なビジネスパーソンは、好印象を与えること間違いないだろう。
(文=吉澤恵理/薬剤師)

吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト

吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト

1969年12月25日福島県生まれ。1992年東北薬科大学卒業。福島県立医科大学薬理学講座助手、福島県公立岩瀬病院薬剤部、医療法人寿会で病院勤務後、現在は薬物乱用防止の啓蒙活動、心の問題などにも取り組み、コラム執筆のほか、講演、セミナーなども行っている。

吉澤恵理公式ブログ

Instagram:@medical_journalist_erie

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