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青木康洋「だれかに話したくなる、歴史の裏側」

「元号」の真実…「明治」はくじ引きで決定?「昭和」は予定外?

文=青木康洋/歴史ライター
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 たとえば、江戸時代最後の天皇・孝明帝は、在位20年の間に「嘉永」「安政」「万延」「文久」「元治」「慶應」と6つもの元号を用いている。改元の理由は、天変地異によって飢餓が発生したり大地震や大火が起きたりと、さまざまだ。あるいは、疫病の流行があったときも改元は実施された。

 元号を改めるということは、それまでの厄災を振り切って新たな時代を切り拓くという意味がある。なんとなく、日本人のメンタルに今なお息づく、“水に流して忘れよう”的な意味合いを感じなくもない。

 さて、数ある元号の中でたったひとつ、くじ引きで決まった元号があることをご存じだろうか。東京・明治神宮のホームページには、次のような文言がある。

「『明治』の元号もいくつかの候補の中から明治天皇さまがくじを引いてお選びになられたのでした」

 慶應4年9月7日の夜、前越前藩主・松平慶永(まつだいら・よしなが)が考案したいくつかの元号案をくじにして、天皇自らが賢所(かしこどころ)で抽籤(ちゅうせん)、その結果「明治」を引き当てたという。

 古来、日本ではくじは神の意思を問うための大切な神事とされており、古代には盛んに行われていた。おそらく、王政復古の大号令によって重要な物事をくじで決めていた古代の風習に立ち返り、くじ引きが採用されたのだろう。くじ引きによって新元号が決定されたのは、後にも先にもこの一度きりだ。

比叡山延暦寺の四季講堂にある「おみくじ発祥之地」の石碑

「昭和」を生んだのは大スクープ?世紀の誤報?

 誰しも気になることといえば、新元号の名称ではないだろうか。しかし、新元号の選定は完全なブラックボックスで行われるので、発表前に知るのはほぼ不可能だ。ただ、逆算的にある程度類推することはできなくもない。

 まずは、過去に使用例のない漢字の組み合わせであること。一度使用された元号は二度と使われることはない。過去に中国の王朝やアジアで使用された例があってもいけないし、企業名、人名、地名、商標、店の屋号などにも重複がないか、厳しいチェックが行われる。

 また、元号をアルファベットの頭文字で表記する習慣があることを考えると、明治の「M」、大正の「T」、昭和の「S」、平成の「H」が頭文字となる元号名は外される可能性が高い。

 新元号にまつわる、おもしろいエピソードがある。昭和から平成に変わる直前のことだ。新元号をスクープしようとした某新聞社の政治部員が、大化から平成まで歴代の元号に使用された文字と、過去に候補とされた漢字を組み合わせて一覧表をつくり、当時の小渕官房長官に見せたことがある。その中には「平成」もあったため、後に小渕氏は「あのときは心臓が止まりそうになった」と語っている。

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