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片山修のずだぶくろトップインタビュー 第8回 宮下直人氏(総合車両製作所 代表取締役社長)

山手線から豪華列車まで…鉄道車両生産の知られざる全貌 歴史的転換と戦う現場 

構成=片山修/経済ジャーナリスト、経営評論家
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宮下 例えば、JR東日本アプリの「山手線トレインネット」のように、スマートフォン上で各列車がいまどこを走っているのか、各車両の混雑具合、室内温度まで確認できます。「E235系」に限らず、山手線の全車両には、特殊音波による「山手線ビーコン」が設置されており、これを、さまざまな企業に使ってもらうサービスを開始したほか、アイデア・アプリコンテストもNTTドコモと協同で行いました。移動時間に、山手線限定コンテンツを楽しむことができます。

片山 コンピュータ電車は業務効率化など、運用する側もラクになるのではありませんか。

宮下 はい。「E235系」には、膨大なセンサーが組み込まれていて、ドアや空調に加えて、ブレーキ周りや電気制御装置など数十種類のデータを常時モニタリングする仕組みを搭載しています。

 また、一部の編成に、走行しながら架線や線路の映像、ゆがみなどのデータを集められる装置を搭載しています。従来は、一定の周期で専用の検測車を走らせて調べていましたが、その必要がなくなります。しかも、データは毎日チェックできますから、部品の交換時期を正確に把握し、交換時期の直前まで使い込め、メンテナンスコストを削減できるというメリットがあります。

ステンレス製車両の普及

片山 「パープルライン」などの海外向け「サスティナ」の特徴はなんですか。

宮下 国内向け、海外向けともに、「サスティナ」の特徴のひとつは、ステンレス製であることです。かつては、電車の材料は鉄でした。日本初のステンレス車両をつくったのは前身の東急車輛製造で、ステンレス車両のパイオニアだったのです。当時、最大ユーザーの国鉄にステンレス車両を買ってもらうために、他の車両メーカーにステンレス製車両のつくり方を教えるといったことを行っています。国鉄は国の機関なので、各メーカーから均等買付が前提でした。鉄道車両全体では現在、おおよそステンレス6に対し、アルミ4の割合です。

片山 ステンレス製車両のメリットはなんですか。

宮下 鉄やアルミに比べて美観維持性、耐腐食性に優れているのです。鉄のように錆びることがなく、アルミのようにくすむこともない。水をかければピカピカで、塗装する必要もない。要するに、メンテナンスが非常にラクなんです。

 それから、アルミは軽いと思われていますが、今はステンレスも高度化した有限要素法という設計によって、車両をアルミとほぼ同じ重さで製作できるため、省エネで、かつ動力費もアルミと同等なのです。

片山修/経済ジャーナリスト、経営評論家

片山修/経済ジャーナリスト、経営評論家

愛知県名古屋市生まれ。2001年~2011年までの10年間、学習院女子大学客員教授を務める。企業経営論の日本の第一人者。主要月刊誌『中央公論』『文藝春秋』『Voice』『潮』などのほか、『週刊エコノミスト』『SAPIO』『THE21』など多数の雑誌に論文を執筆。経済、経営、政治など幅広いテーマを手掛ける。『ソニーの法則』(小学館文庫)20万部、『トヨタの方式』(同)は8万部のベストセラー。著書は60冊を超える。中国語、韓国語への翻訳書多数。

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