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この3週間はなんだったの?『直虎』、嵐の前の「長すぎる静けさ」に不信感拭えず

文=吉川織部/ドラマウォッチャー
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この3週間はなんだったの?『直虎』、嵐の前の「長すぎる静けさ」に不信感拭えずの画像1『おんな城主 直虎』公式サイトより

 柴咲コウが主演するNHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』の第23回が5月11日に放送され、平均視聴率は前回から0.2ポイント増の12.3%(関東地区平均、ビデオリサーチ調べ)だったことがわかった。

 井伊家を取り巻く不穏な世間の動きをよそに、領内で起こるスケールの小さい話が続いているが、今回も龍雲丸(柳楽優弥)率いる盗賊たちを中心としたストーリー。今川の目付である近藤康用(橋本じゅん)が直虎(柴咲)のもとを訪れ、菩提寺の本尊が盗まれてしまったと訴えた。近藤はかつて自らの領内で材木泥棒をはたらいた龍雲丸一党が何のお咎めもなく井伊で使われているのが気に入らず、仏像泥棒の犯人として彼らを引き渡すように迫った――という展開だった。

 直虎が龍雲丸たちの過去を水に流して仕事を任せたのは賢い判断ではあったが、近藤家をないがしろにしたことに非がないとはいえない。南渓和尚(小林薫)も「いたずらに敵を増やしてもよいことは何もないぞ」と直虎を諭し、頭を下げて代わりの本尊を寄進することで手打ちを図ろうとした。家臣の助言はあまり聞き入れない直虎も南渓の説得には応じ、近藤の前で殊勝に頭を下げた。感情の赴くままに行動することが多かった直虎が、領主として大きな一歩を踏み出した瞬間といえよう。南渓の「頭を下げるのも当主としての役目じゃぞ」との台詞とも相まって、サラリーマン社会を見ているような気にさせられる。

 事実がどうであるかにかかわりなく、責任者は頭を下げて事態の幕引きを図らなければならない時がある――という結論で終わるかと思われたが、事態はここから急展開。“代わりの本尊を寄進するために、厨子の大きさを見ておきたい”との南渓の求めに応じて寺の僧が厨子を開いたところ、盗まれたはずの本尊が現れた。何やらあわてる近藤に、本尊が自分で戻ってきたのだから、この件はこれで終わりにしようと持ち掛ける南渓。「(ご本尊様が)すべてお見通しじゃぞ」とたたみかけられては、近藤もぐうの音も出なかった。

龍雲丸登場の狙いはなんだったのか?

 一連の流れには不自然な点がいくつかあったため、「どういうこと?」ともやもやしたが、南渓と直虎が近藤に頭を下げている間に、寺の中に隠された本尊を龍雲丸が元の場所に戻した、というスパイ映画のような種明かしにはちょっと笑った。エピソードとしてはなかなかおもしろかったし、直虎と出会ったことで龍雲丸が少しは改心したように見えるのも、今後の展開を考えるとわくわくする要素だ。

 それだけに、家臣として召し抱えるという直虎の誘いを龍雲丸が断ったラストには複雑な思いがする。妄想としては、彼らが井伊の赤備えの精鋭として戦場で大暴れするのを見たい気持ちが大いにある。できることなら時代をすっ飛ばして、関ヶ原や大坂の陣で一騎当千の働きをしてもらいたい。それは無理な話だが、彼らの盗賊姿と甲冑姿のギャップを見てみたいと思う視聴者はほかにもいると思う。

 その一方で、井伊家の家臣になるのではなく、「仲間」としていざという時に駆けつける存在であってほしいとの思いもぬぐえない。秩序の外にいる者として生きてきた彼らにとって、主君に仕える侍としての生活は窮屈すぎてかわいそうな気もする。彼らが最終的にどうなるのかはわからないが、どちらにせよかっこいい見せ場が再び訪れることを願わずにいられない。

 ドラマにどっぷり浸かった感想としては上記のような言い方になるが、ドラマウォッチャーとしては「最終的に家来にならないんだったら今までの3週はなんだったんだよ」と声を大にして言わなければならない。「こんないきさつがあって、井伊家にも家臣が増えました」というエピソードだったのなら意味は分かるが、このままでは「変わったやつらが登場して去っていきました」というエピソードとして完結してしまう。まさか、「直虎と親しく接する龍雲丸に軽く嫉妬する政次」を描きたかったわけでもあるまい。直虎が他人に頭を下げた今回のシーンはそこそこ重要だとは思うものの、それを描くために盗賊の登場が必要だったとも思えない。

 歴史の流れをぱったりと止め、3週にわたって描いた盗賊ストーリーとは何だったのか。いつか、「こんな素晴らしい展開の伏線だとは思ってもみなかった」とこの3週を絶賛する日が来ることを待ちたい。次回は一転して、今川・武田・松平など井伊家を取り巻く諸国の緊迫した情勢に焦点が当たるようだ。「嵐の前の静けさ」はもう存分に味わったので、ここからは嵐が吹き荒れるような怒涛の展開を期待したい。
(文=吉川織部/ドラマウォッチャー)

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