なぜ、今シーズンは内角の直球をうまく使うようなピッチングが鳴りを潜めてしまったのか。

「肉体的にも精神的にも疲労があるのだと思います。たとえば、メジャーでは9人並ぶバッター全員が強打者で、気が抜ける場面などない。そんな試合を何年も続けているわけですから。

 日本のプロ野球に来るアメリカの選手たちは、すでに第一線を退いているかこれからメジャーを狙うような選手か……。つまり、バリバリのトップ選手ではないわけですが、それでもパワーは日本人選手の比ではないですよね。メジャーのクリーンナップといえば、それ以上のバッターがゴロゴロしており、下位打線のバッターでもすごいパワーを持っています。

 たとえ無理な体勢で打ったとしても、スタンドインさせるのがメジャーの選手です。そんな対戦が続くメジャーでの日々は、日本時代とは比べものにならない疲労度でしょう」(同)

田中将大、今シーズンの復活の可能性は?

 田中投手は、ピッチングで大事にしていることや自分の強みについて、常々「気持ち」と言ってきた。グローブに「氣持ち」という文字を書き込んでいることは有名だ。山下氏は、「今こそ、自分が一番大事にしてきた“気持ち”という原点に立ち返ることが重要」と語る。

「今シーズンは、負けたときのコメントが技術的なものばかりです。強い気持ちと高い技術に裏打ちされた総合的な実力があるからこそメジャーで勝ってきたのに、技術の話しかしない。

 気持ちの部分で違う流れが生まれれば、アウトコース一辺倒だった配球が変わり、ピッチングの組み立ても変わるでしょう。もともと力のある選手ですから、復活の目は十分にあると思います」(同)

 次の登板は12日のボルチモア・オリオールズ戦の予定だったが、首脳陣の判断で13日のロサンゼルス・エンゼルス・オブ・アナハイム戦となった。ジョー・ジラルディ監督は、その理由について、今シーズンすでにオリオールズとの対戦が二度あること、中5日にすることで調整時間が増えることなどを挙げており、チームとしての“配慮”が見て取れる。

 田中投手のピッチングにいい意味で“変化”が生じるかどうか、注目すべき試合となりそうだ。
(文=石丸かずみ/ノンフィクションライター)

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