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救急出勤激増で8千円自己負担も…夜間に医師が患者宅往診の画期的事業広がる

文=吉澤恵理/薬剤師
救急出勤激増で8千円自己負担も…夜間に医師が患者宅往診の画期的事業広がるの画像1「Thinkstock」より

 消防庁によると、最近10年間の救急出動件数は約30%増となっており、 今後も人口が減少傾向にある中、 出動件数は増加を続け600万件を超えるであろうと推測している。

 症状に緊急性がなくても、交通手段としてや夜間などの時間外に診てもらえる病院がないからなどといった理由で救急車を呼ぶいわゆる「救急車のタクシー化」が問題となっている。

 こういった問題を解決するため消防庁では、不急な救急車の利用をしないよう呼びかけている。しかしながら「不急」とは誰がどう判断するのだろうか。過去には、救急車を要請したものの「不急」と判断され、その後、不幸にも死亡に至ったケースもある。こういった不幸な結末を招かないためにも、時間を問わず体調不良時には、医師の診察を受けたいものだ。

 そういった需要に応えるべく活動するドクターたちがいる。それは夜間の往診事業を専門に行う「ファストドクター」の医師たちだ。2016年4月に「夜間往診みなとホームクリニック」と連携して事業をスタートしてから、その利用者数は1500名を超え、さらに伸び続けている。現在、医療の抱える問題点なども含め、代表医師の菊池亮氏に話を聞いた。

救急外来は、すべての患者に開かれたものではない

 菊池氏は、「夜間、一次救急に該当する軽症患者の対応に積極的な医療機関が少ない現状に、急な体調不良や怪我で不安を抱える患者の受け皿が必要だと考えました」と話す。菊池氏が言うように、夜間の救急外来の現状は厳しく、16年10月時点での都内における休日・全夜間診療事業実施医療機関は、245施設である。この245施設が十分な数といえないことは、東京消防庁の救急車の平均到着時間が11年には7分10秒だったのに対し、14年には7分54秒と長引いていることをみてもわかるだろう。

 これは都内に限ったことではなく、全国的に同様の傾向にある。1秒の遅れが生死を分ける重症患者には深刻な事態であるため、年々増加する救急要請に対し救急車や救急外来は、軽症患者の受け入れに難色を示している。

 そこで、大学病院などの各救急外来では、救急医療対象外とされる患者から、「初診時選定療養費」として保険適応外の自費診療費を請求することで軽症患者の受診を減らす策を講じている。

 具体的には、入院治療に至らない軽症のケースや、救急外来を利用する旨の他医療機関からの紹介状を持参していない場合は、この初診時選定療養費を支払わなければ救急外来の受診を受けることはできない。この初診時選定療養費の金額は医療機関によって異なり、一般的には5000円程度だが、医療機関によっては8000円など高額なところもある。また通常、救急外来での受診では1日分の薬しか処方されないため、いずれにせよ薬の服用が数日必要な症状であれば翌日に医療機関の受診が必要なる。こういった点では、救急外来の利用は軽症患者にとって経済的負担が大きいものになる。

吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト

吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト

1969年12月25日福島県生まれ。1992年東北薬科大学卒業。福島県立医科大学薬理学講座助手、福島県公立岩瀬病院薬剤部、医療法人寿会で病院勤務後、現在は薬物乱用防止の啓蒙活動、心の問題などにも取り組み、コラム執筆のほか、講演、セミナーなども行っている。

吉澤恵理公式ブログ

Instagram:@medical_journalist_erie

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