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片田珠美「精神科女医のたわごと」

【築地移転・折衷案】「歯切れの悪くなった」小池知事、敵をつくり攻撃する手法が限界

文=片田珠美/精神科医

 わかりやすい敵をつくって攻撃する手法は、他の政治家も用いている。アメリカのトランプ大統領は、「メキシコからの不法移民」「アメリカをテロ攻撃するイスラム国」「嘘ばかりつくメディア」などを、敵と名指しして罵倒した。橋下徹元大阪市長も、公務員や教師という敵をつくり、それに立ち向かう「改革者」として自分自身を演出した。

3つのメリット

 こうして敵をつくると、少なくとも3つのメリットがある。まず、うまくいかなくても、自分のせいではなく、「抵抗勢力」をはじめとする敵のせいなのだと言い訳できる。また、どんな集団でも、共通の敵に立ち向かうことで一体感が生まれ、団結できる。さらに、公開の場で敵を叩きのめすことによって、大衆が復讐願望を満たし、カタルシスを得られるので、ガス抜きになる。

 だからこそ、これは非常に巧妙な手法であり、ドイツの政治学者、カール・シュミットが政治の本質を「友と敵」という関係でとらえたのは、当然かもしれない。実際、大衆の支持を集めることに成功した政治家の多くは、わかりやすい敵をつくって攻撃する手法を用いている。シュミットは「ナチスの御用理論家」として有名だが、ナチスが敵として攻撃したのはユダヤ人だった。

 歯切れのいい「小池節」を鳴らすためには、敵をつくって攻撃することが不可欠だろう。これから小池知事が誰を敵とみなして攻撃するのか、興味津々である。
(文=片田珠美/精神科医)

【参考文献】
カール・シュミット『政治的なものの概念』田中浩・原田武雄訳、未來社

片田珠美/精神科医

片田珠美/精神科医

広島県生まれ。精神科医。大阪大学医学部卒業。京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程修了。人間・環境学博士(京都大学)。フランス政府給費留学生としてパリ第8大学精神分析学部でラカン派の精神分析を学ぶ。DEA(専門研究課程修了証書)取得。パリ第8大学博士課程中退。京都大学非常勤講師(2003年度~2016年度)。精神科医として臨床に携わり、臨床経験にもとづいて、犯罪心理や心の病の構造を分析。社会問題にも目を向け、社会の根底に潜む構造的な問題を精神分析学的視点から分析。

Twitter:@tamamineko

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