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米国中央銀行、極めて異例の行動へ…保有資産の削減計画公表、景気回復終焉の兆候か

文=真壁昭夫/法政大学大学院教授
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 米国の経済は徐々に景気のピークに近づいている可能性がありそうだ。すぐに景気が減速する展開は想定しづらい。同時に景気が現在の回復ペースを維持し続けるとも考えづらい。

 このなかで、多くの投資家はリスクに対して鈍感になっている。北朝鮮問題や米国の政治への不安などに対しても、投資家は“無視”を決め込んでいるかのようだ。それが、市場の落ち着きを支え、株価の上昇トレンドをサポートしていると考えられる。少なくとも、景気全般が安定し投資家のリスクテイクが支えられている状況とは異なる部分が、今の金融市場にはある。

金融政策の正常化は市場を混乱させないか

 
 問題は、FRBがより詳細なバランスシートの縮小に関する計画を提示したとき、金融市場の安定が維持されるか否かだ。早ければ7月のFOMCにてFRBはバランスシートの縮小に関する、一段と踏み込んだ方針や計画を公表するだろう。その上で、9月に資産削減の開始が決定される可能性がある。

 保有資産の削減は将来の金融緩和の余地を確保するためには避けて通れない。6月のFOMCの内容からは、ある意味でFRBがそれを急いで進めようとしていることが読み取れる。
 
 その時々の景気の状況にもよるが、基本的にはバランスシート縮小が開始される可能性が高まれば、米国の金利には上昇圧力がかかるだろう。それに景気が耐えられるかが焦点だ。国債利回りの上昇は、オートローンや住宅ローンの金利上昇にもつながるだろう。

 これまでの景気動向を振り返ると、雇用は増えたが、米国の賃金は増加していない。家計の可処分所得が増えづらい状況の中で金利が上昇し始めると、消費は抑制されるだろう。この展開を防ぐためには、米国の政府がIT技術などの研究開発をサポートし、社会全体でのイノベーションを促進することが必要だ。ただ、トランプ政権がそうした政策を進めるとは期待しづらい。

 また、米国内外の金融市場では、株式などの金融資産の価格変動率が低下し、相場がこう着している。この結果、投資資金はより高い利得を求めて新興国にも流入している。米国の金利に上昇圧力がかかれば、世界の投資資金はドル買いに向かうだろう。それは新興国の株高、通貨高の逆回転につながり、世界的なリスクオフを引き起こすかもしれない。

 このように、バランスシート縮小に向けた議論の進行は、市場参加者の楽観を揺さぶりかねない。結果的に、景気が軟化するなかで、FRBはバランスシートの縮小を進めることになるおそれもある。
(文=真壁昭夫/法政大学大学院教授)

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