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小笠原泰「日本企業は大丈夫なのか?」

東芝、消滅が濃厚…「国営」原発会社設立か、東芝・日立・三菱の事業分離し統合

文=小笠原泰/明治大学国際日本学部教授
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 これらに比べると東芝エレベータを中核とするエレベータ事業は相対的な事業優位性があるようにみえるが、国内では三菱電機と日立製作所の後塵を拝する第3位であり、海外をみれば巨人のオーチス、シンドラー、ティッセンクルップ、東芝エレベータに出資しているコネなどがおり、国内トップの三菱が5位に入るが、三菱のシェアは4位のコネの半分程度である。この事業も今後の東芝を支える基幹事業に育つかといわれると難しいのではないか。

 120年の歴史を持つ東芝の鉄道事業は、モーターやインバーターなど鉄道を支える電機品や機関車を製造しており、国内では日立や三菱重工業と並ぶ大手の一角に数えられる。積極的な海外展開を模索しているようであるが、15年にイタリアのアンサルドブレーダを買収し、鉄道ビジネスユニットの最高経営責任者にドーマー氏を置くなど、鉄道事業のグローバル展開を勇猛果敢に進める日立製作所とは大きな差があるといえよう。

 これらに比して、公共インフラ事業は、安定的な更改需要もあり、実績や関係性も重要なので底堅い事業ではあり、これからの東芝を支える事業になるともいえるが、これらの事業の顧客の多くは、国か地方自治体であり、官公庁と地方自治体に支えられているという意味では、国頼みの事業ともいえる。

エネルギー事業

 海外の原子力発電事業を失い、国内の原子力事業は別組織となってはいるが、主軸は火力などの発電・送配電事業となる。スマートメーターは悪評をかった経緯があり、市場の信頼があるかは疑問である。火力発電などのエネルギーシステムソリューション部門は、これも三菱、日立、富士電機などとしのぎを削ることとなり、市場の縮小を考えると、これも統合が進むと考えるのが普通であろう。

 富士電機の母体であるシーメンスは、東芝の火力発電部門に興味があるとされるが、シーメンスのライバルである米ゼネラル・エレクトリック(GE)と提携関係にある東芝にとって、シーメンスによる買収はハードルが高いだろう。

 三菱と日立は14年に火力発電タービン事業を統合し、世界3位となる三菱日立パワーシステムズを立ち上げているので、政府の主導でここに東芝が加わるという「日の丸統合に向かう可能性もある。しかし、現実的なところは、最近日本進出に積極的なGEによる買収ではないか。どの道、単独での東芝の名前はなくなるであろう。

 国内原子力事業は国策、つまり原発の維持・推進や海外へのインフラ輸出のため、採算が取れなくてもやめられないだろう。現実的には、三菱や日立の原子力事業を国主導で統合して、実質国営企業にするというのが、もっとも現実的なシナリオだろう。ここに、電力会社の原発部門も組み込むかもしれない。

「日の丸再編で液晶技術を守り、優位を取り戻す」の掛け声の下に、12年に産業革新機構を通した政府主導によって、負け組みとなったソニー、東芝、日立製作所の液晶ディスプレイ部門を統合したが、思惑通りにことがまったく進まないジャパンディスプレイの二の舞いになる懸念がある。

東芝の“技術力”

 以上、東芝の事業を見てみると、東芝の主たる存続事業は、国家に支えられている公共インフラ事業であり、それ以外は政府主導の国営統合事業となるか、今後も切り売りされ、東芝という巨艦は解体への道を歩むのではないであろうか。この行き着く先を考えると、東芝は実質国有化の道を歩むのではないだろうか。将来に東芝の名前を残せるとすると、国家に寄り添う公共インフラ企業くらいであろう。

 東芝の高い技術力に同社復活を賭けるべきとの見方もあるが、東芝の半導体事業をけん引しているNAND型フラッシュメモリーを発明した舛岡富士雄東北大学名誉教授の「東芝では当初、フラッシュメモリーの技術はまったく評価されなかった」という話や、同氏が東芝を辞した経緯を読むに、組織体質を改めない限り、東芝の技術力に賭けるという話も空疎だろう。
(文=小笠原泰/明治大学国際日本学部教授)

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