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増田美加「医療と賢くつき合うための患者力」

小林麻央さんの若年性乳がん、こんな人がかかりやすい?こんな症状は危険サイン?

文=増田美加/医療ジャーナリスト
小林麻央さんの若年性乳がん、こんな人がかかりやすい?こんな症状は危険サイン?の画像1「Thinkstock」より

 小林麻央さんの訃報に触れ、周りの乳がん経験者からもその死を悼む声がたくさん寄せられています。私も乳がんを経験したひとりとして、麻央さんのブログを拝読していました。麻央さんは乳がんを公表し、メッセージを発信し続け、自分らしく最期まで生きました。乳がん経験者であるかないかにかかわらず、多くの女性が勇気づけられたと思います。

 一方で、若い麻央さんが亡くなったことで、不安になる女性が多くいます。今、乳がんに関しては、さまざまな情報があふれています。正しい知識を得て、冷静に行動してほしいと思います。

 麻央さんのような若い年代の乳がんは、どんな人がかかりやすく、何に注意すべきなのでしょうか?

麻央さん世代の「若年性乳がん」とは?

 20代、30代の若い世代の乳がんで、34歳以下の乳がんのことを「若年性乳がん」といいます。若年性乳がんはよく知られておらず、不安に思う人が多いのも事実。けれども、若年性乳がんは、40代、50代の乳がんと比べれば決して多くはないのです。

 今、日本における乳がんの罹患率(りかんりつ)は30代から増加しはじめ、40代後半から50代前半にピークを迎え、その後は次第に減少します。日本では圧倒的に40~50代の女性がかかるリスクが高いのが乳がんです。

 日本女性では、乳がんにかかる数は、乳がんで死亡する人の数の3倍以上です。これは、女性の乳がんの生存率が比較的高いことを意味しています。5年生存率は約90%と高く、治療で救える人が多いがんなのです。

 男性にも乳がんはあって、男性乳がんは、年間死亡数で女性の乳がんの100分の1以下のまれながんです。しかし、女性の乳がんに比べて悪性度が高く、生存率が低いことが知られています。

 日本の乳がんの現状は、罹患率、死亡率ともに年々増加。日本女性がかかるがんのなかで最も多いがんです。最新のデータで罹患率は、11人に1人といわれています(国立がん研究センターがん対策情報センター 2012年)。これはどんどん欧米の数字に近づいています。出生年代別では、最近生まれた人ほど罹患率、死亡率が高い傾向にあります。

 しかし、麻央さん世代の34歳以下の若年性乳がんは、乳がん全体の3%にも満たない数で、全体から考えると非常に少ないのです(国立がん研究センターがん対策情報センター 「年齢別乳がん罹患率の推移」より)。

 ですから、20代、30代で若年性乳がんにかかるリスクは、決して高くありません。必要以上に心配する必要はないのです。

「若年性乳がん」に注意すべき人とは?

 では、どんな人が若年性乳がんにかかりやすいのでしょうか?

 気になるのは、「遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)」とのかかわりです。血縁に乳がんや卵巣がんの方がいらっしゃる場合、なかでも50歳未満で乳がんを発症した血縁者がいらっしゃる場合は、遺伝性の乳がんにかかる可能性があります。

 若年性乳がんは、「遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)」とかかわっているといわれています。HBOCは、女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが告白したことでも有名ですね。

 ただし、HBOCのような遺伝性の乳がんは、乳がんや卵巣がんにかかった人全体の約1割以下にすぎません。これもそんなに多い数字ではありません。

 血縁(母、姉妹、祖母、叔母)に乳がん、卵巣がんの方がいらして心配な場合は、一度、乳腺外科専門医を受診して相談されるといいと思います。

 若年性の乳がんでない場合(35歳以降の乳がん)は、乳がんも卵巣がんも、遺伝性でないことのほうが多いことは、忘れないでください。ですから、血縁に乳がんや卵巣がんの人がいないからといって、乳がんになりにくい、ということではありません。

「若年性乳がん」の詳しい情報はこちらから

 HBOCについては、「日本HBOCコンソーシアム」を参考にしてください。若年性乳がんについての詳しい情報は、「厚生労働省 若年乳がん患者のサバイバーシップ支援プログラム」が参考になります。治療や、QOL(クオリティー・オブ・ライフ)、患者さんの情報が少しずつ構築されています。若年性乳がんの患者会ともリンクされています。

 20代、30代は、自治体などの乳がん検診はありません。ですから、もしも20代、30代で、乳房のしこりや乳首からの分泌液などの症状があれば、病院を受診することが大切です。パートナーが女性の乳房の異常を見つけることも少なくありません。毎月、生理開始から7日後くらいで乳房の張りがないころに、触ってみることは大切です。

 受診するなら、乳腺専門医がいる乳腺外科、外科(乳腺専門)です。多くの産婦人科は、乳腺は専門ではありませんので、間違えないようにしてください。症状がある場合は、検診ではなく、受診(診療)で健康保険が使えます。

 乳房に特に気になる症状がなくて、血縁に乳がんや卵巣がんの方がいらっしゃらなければ、必要以上に心配しなくて大丈夫です。繰り返しになりますが、34歳以下で乳がんにかかる方は、乳がん全体の3%にも満たないのですから。

増田美加/医療ジャーナリスト

増田美加/医療ジャーナリスト

30年以上にわたって2000名以上の医師を取材。予防医療の視点からヘルスケア、エイジングケアの執筆、講演を行う。乳がんサバイバーでもあり、さまざまながん啓発活動を展開。著書に『医者に手抜きされて死なないための患者力』(講談社)、『女性ホルモンパワー』(だいわ文庫)ほか多数。
増田美加公式ホームページ

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