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タカタ破綻、中国系企業が優良事業を買い叩き…ついに自動車会社にも見捨てられる

文=河村靖史/ジャーナリスト
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 こうしたなか、タカタ創業家は揺さぶりをかけられる。一部報道で「タカタが民事再生法の申請で最終調整」と報じられると、これまで債務返済の延期に応じてきた金融機関の一部が態度を変え、返済期間の延長に応じてくれなくなってきた。

「海外の一部では前金を支払わないと部品や材料を供給してもらえなくなった」(高田会長)

 資金繰りが急速に悪化し、このままだと運転資金も底をつく可能性も出てきた。優秀な社員の流出も懸念され、創業家としては法的整理を飲まざるを得ない状況に追い込まれていった。

 タカタは、法的整理の絵を描いたのはホンダやトヨタなどの自動車メーカーと金融機関であることがわかっていながらも、自動車メーカーに対して民事再生法申請後も現在の取引条件のまま部品の発注を継続することや、タカタへの代金支払い期間を短縮するよう頭を下げ、大手自動車メーカーはこれを了承した。

 ただ、タカタは「私的整理でないと部品の供給に支障が及びかねない」と主張していたが、法的整理の手続きが開始された後も部品の供給は順調に進んでいる。エアバッグ問題が発覚してからも表舞台に立つことなく、情報開示に消極的で強い批判にさらされながら、その地位にしがみついてきた高田会長は「スポンサー企業への事業承継に目処が立った段階で辞任する。その後は一切(タカタと)かかわりを持たない」と述べ、やっと辞任すること明確にした。

買い叩き

 タカタは今後、裁判所管理下で経営再建が進む。KSSは、エアバッグの異常破裂の原因と見られる硝酸アンモニウムを使ったエアバッグ・インフレーターを除くほぼすべてのタカタの事業を1750億円で買収する。

「欠陥エアバッグ問題でブランドが大きく傷ついたとはいえ、本業の実力を考えると、いくらなんでも安過ぎる」(自動車部品メーカー)

 タカタは17年3月期の連結決算は、エアバッグ関連の特別損失で当期赤字が795億円と3期連続で赤字となった。しかし、売上高は6625億円、営業利益が389億円、営業利益率5.9%と、自動車部品メーカーとしては優良な大手企業だ。スポンサーとなるKSSの親会社である寧波均勝電子は、創業13年の新興企業。ここ数年、欧米企業の買収を繰り返してグループを拡大してきたとはいえ、連結売上高は3000億円ほど。タカタと比べると「アリと象」ほど違う。

「オートリブやZFといった大手をスポンサーとして望む声もあったが、シェアが高くなり過ぎて調達コストが上昇することを懸念する声もあった」(自動車メーカー関係筋)

 規模が小さく、ブランドイメージをさほど重視せず、資金拠出を短期間に決断できる中国企業グループにタカタの事業を引き継ぐことで落ち着いた。自動車メーカーの一部は寧波均勝電子にタカタの主要事業が移管されることを不安視していることから、寧波均勝電子はスポンサーとなる条件として「KSSに事業移管後も自動車メーカーが部品の発注を継続することを確認した」(タカタ)という。

 欠陥エアバッグが大きな社会問題となってから約3年。タカタの経営破綻によって、自動車メーカーはエアバッグのリコール処理費用のほとんどを自社で負担することになり、タカタに債権を持つ金融機関もその多くが取り立て不能に陥る可能性がある。

 結局得したのは、法的整理の決断を迫られたタカタから1750億円という破格の価格で優良事業を手に入れた、寧波均勝電子だけかもしれない。
(文=河村靖史/ジャーナリスト)

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