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日銀、赤字に陥る可能性…異常な資産膨張、「出口」で増税や社会保障削減の懸念

文=横山渉/ジャーナリスト
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 円キャリートレードは、短期の資金を調達し、償還すれば借り換えを繰り返すものだが、長期でも円の金利が低いので、海外の発行体(政府や金融機関)は日本で調達し始める。彼らが日本国内市場で日本の投資家向けに円建てで発行する債券が、「サムライ債」と呼ばれるものだ。1995年、ギリシャ政府が発行したサムライ債は大いに注目された。ギリシャは財政悪化するなか、ユーロで国債発行できず、金利の安い市場を探したら日本だったというわけである。ギリシャのサムライ債は、価値が額面の半額以下に下落していたこともあった。

 そして今回、インドネシア政府は6月上旬、3年・5年・7年ものという3本立でサムライ債を発行している。サムライ債の発行は3年連続だ。フィリピン政府もまた、7年ぶりにサムライ債の発行を検討しているという。

「米国が金融引き締めに入ったのは、不動産価格が上がり始めていることもあり、これ以上緩和しているとバブルになる可能性があるから。そこで、ドルを絞っていたら、ジャブジャブの円が押し寄せてきたなんてことになれば、米国は怒るでしょう」

副作用を将来に先送りしているという根深い問題

 国の“借金”は1000兆円を超えている――。こんなニュースをよく聞くが、日銀の国債大量保有は、「国の借金論」と表裏一体だ。しかし、株価は2万円の高値を維持し、失業率も低く、少なくとも表面上は国の“借金”で何か国民にとって悪いことが起きているようには見えない。仮に日本政府の借金が増え過ぎて本当に困っているなら、ほぼゼロ金利の国債を買う投資家はいないはずだ。要するに、現時点では国民には痛みを伴わない問題なのである。とすれば、将来はどうか。

「例えば、安倍政権が退陣し、政府が財政を立て直そうとしたとき、始めて国民生活に影響が出てくるでしょう。増税や社会保障削減などです。そうなるまでは、影響は出ません。せいぜい、預金金利がなくなる程度。この問題の悪いところは、後始末のとき。今はみんな気持ちよい状態です。

 実は政府にとって、経済の好調というのは、あまり好ましくない。増税論が出てくるし、利上げの話も出てくる。むしろ、景気があまり良くないときのほうが財政出動や減税、金融緩和もできる。国民に気持ちの良い政策が打てるわけです。20年以上もデフレ経済で長期停滞していますが、国民はそれほど厳しいとは感じていないでしょう。でも、政府はデフレ脱却しないと大変だと、危機を演出している。この国はGDPの60%が個人消費です。個人消費が拡大しないと本当の意味で景気が良くならない。消費するのはお金を持っている高齢者層。しかし、年金暮らしの高齢者層には、物価が上がらないデフレのほうが都合がよい。矛盾した構造になっているのです」

 政府・日銀が現在の金融緩和策をやめて引き締めに入れば、急速に景気が悪くなるのは十分考えられる。それだけに、出口戦略の難しい問題なのだ。
(文=横山渉/ジャーナリスト)

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