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【神戸山口組分裂・最新動向】逮捕された全員が完全黙秘で井上組長釈放…メンツをかけた当局の反攻は?

文=沖田臥竜/作家
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【神戸山口組分裂・最新動向】逮捕された全員が完全黙秘で井上組長釈放…メンツをかけた当局の反攻は?の画像1家宅捜索の対象にもなった山健組本部。

 7月6日、淡路にある神戸山口組俠友会本部で、三代目古川組の「盃直し」が執り行われた。これまで二代目古川組を率いていた古川恵一組長は総裁に就任し、三代目古川組組長は三代目琉真会の仲村石松会長が襲名したのだ。

 盃直しとは、新たに親子、そして兄弟の契りを結ぶこと。今回、二代目組長だった古川組長が三代目総裁に就任したために、三代目として新たに古川組のトップとなった仲村組長と関係団体との幹部との間で、兄、弟、そして親子縁組の盃直しが執り行われたのだ。仲村組長から盃を新たにおろされたのは、舎弟3名と若中9名。三代目琉真会以外にも、関東に本拠を置く古川組系列の組織や、一時期古川組を離れていた武闘派幹部が合流し、仲村組長から盃を受けたことが関係者の話で明らかにされている。

 こうして三代目古川組は正式に発足したが、この日、動いたのは神戸山口組だけではなかった。これに対峙する警察当局も激しい動きを見せたのである。

 同日、今年1月に起こった会津小鉄会での乱闘事件の容疑者として神戸山口組の井上邦雄組長らを逮捕していた京都府警が、同事件の関係先として神戸山口組新事務所(神戸市二宮)と四代目山健組本部(神戸市花隈)に順次、家宅捜索に入ったのだ。さらに午前中に執り行われた三代目古川組の盃直しと入れ替わるかたちで、午後から俠友会本部へも家宅捜索をかけている。

 これらの捜索が行われたことで、一部の関係者の間では、井上組長らが再逮捕されるのではないかという噂も飛び交ったが、ある神戸山口組系幹部はこんな見方をしていた。

「京都府警は乱闘事件に関わったとして、大阪刑務所に服役中だった六代目会津小鉄会の馬場美次前会長も逮捕していたが、前日の7月5日に処分保留で再び大阪刑務所へ移送している。井上親分の勾留期限いっぱいとなる7日の前日に関係先に一斉捜索をかけたのは、京都府警の姿勢、つまり『タイムリミットが来たので井上組長を一旦は釈放するが、捜査はあくまで継続中である』ということを示すためのものだったのではないか」

 そして7日、井上組長が留置されていた下京署から処分保留で釈放された。このほか、乱闘事件に関与したとして逮捕された人物のうち、6人が処分保留となっている。当局は、井上組長らを起訴するまでの決定的な証言や証拠には行き着けなかったようだ。

沈黙を貫いた山健組の鉄則

「山健にあらずんば山口組にあらず」とまでいわれるほど山口組の中核団体であり続けてきた山健組には、「団結、報復、沈黙」とのスローガンがある。これについては、かつて二代目山健組組長で五代目山口組組長に登りつめた渡辺芳則組長は「何も物騒なものではない」と取材陣に対して述べている。そして、この言葉の通り、今回逮捕された井上組長をはじめとする山健組幹部らは誰一人として、当局の取り調べに対して口を開かず沈黙を守り続けたと、ある関係者が話している。このことが処分保留につながったようだ。

「今回の逮捕者の中には、事件後に神戸山口組から離脱し、任俠団体山口組に参加した元四代目山健組系の組長らもいた。彼らが、井上組長に関する不利な供述をするのではないかという噂も確かにあったのだが、袂を分かったとはいえ、やはり山健組の伝統は脈々と受け継がれており、誰一人として口を割っていない。指名手配されている中田広志会長(四代目山健組若頭、五代目健竜会会長)がいまだに逮捕されていないこともあって、拘留中の誰一人も話さないとなれば公判維持は難しいと検察サイドも判断したのではないか」

 こうした検察の判断を受け、そもそも今回の立件を進めてきた京都府警は、自身のメンツもあり、「これで捜査を終えたわけではない」ということを示すために、6日に神戸山口組の関係先に家宅捜索をかけたといわれている。

 また、捜査関係者によれば、7日午後2時過ぎに釈放された井上組長の出迎えには、神戸山口組若頭である俠友会の寺岡修会長らが参加し、午後4時過ぎに四代目山健組本部へと入ったのが確認されているようだ。そこには、神戸山口組最高幹部らだけではなく、友好関係にある三代目俠道会、五代目浅野組、浪川会などの首脳らが駆けつけたのではないかと捜査関係者は話している。

 これによって、一連の乱闘事件の発端ともなった、馬場前会長の名前を騙って偽造ファクスを流したという「有印私文書偽造事件」で逮捕されている六代目山口組幹部らや、七代目会津小鉄会の原田昇会長の釈放が予想されている。だが今後、起訴まで持っていくことができなかった京都府警がどのような方針を固めていくのかに関心が集まる。さらなる摘発を続けていくのか否か。それが、3つに分かれた山口組の動向にも影響を及ぼすのではないかという気がしてならない。

(文=沖田臥竜/作家)

●沖田臥竜(おきた・がりょう)
2014年、アウトローだった自らの経験をもとに物書きとして活動を始め、『山口組分裂「六神抗」』365日の全内幕』(宝島社)などに寄稿。以降、テレビ、雑誌などで、山口組関連や反社会的勢力が関係したニュースなどのコメンテーターとして解説することも多い。著書に『生野が生んだスーパースター 文政』『2年目の再分裂 「任侠団体山口組」の野望』(共にサイゾー)など。最新刊は、元山口組顧問弁護士・山之内幸夫氏との共著『山口組の「光と影」』(サイゾー)。

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