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中国資本、日本で「水源」買い漁りか…海外資本が大量マンション建設→途中放棄で混乱

文=秋津智幸/不動産コンサルタント
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中国資本、日本で「水源」買い漁りか…海外資本が大量マンション建設→途中放棄で混乱の画像1「Thinkstock」より

 7月3日に国税庁が2017年1月1日時点の路線価を発表しました。全国平均は2年連続で上昇。全国最高額は32年連続で銀座五丁目の鳩居堂前で、1平方メートルあたり4032万円となり、バブル期を超えて過去最高額となりました。

 今回の路線価の発表では、北海道のニセコ地区が注目を浴び、同地区後志管内倶知安町山田(道道ニセコ高原比羅夫線通り)は上昇率が77.1%と、3年連続で全国一高かったとの報道が目につきました。北海道内の上昇率の上位には、富良野市幸町や小樽市堺町など観光地を抱える場所が目立ち、話題の倶知安町山田はコンドミニアムなどの建設を計画する外国人が高値で土地を取引するケースが増えて、上昇率が高まったといわれています。

 こうした状況で気になるのは、海外資本による日本の土地取得が与える将来への影響です。この話題でよく取り上げられるのが、水源(水資源)の問題ですが、そのほかにも海外資本が日本の土地を取得することによる懸念点があります。

水源を取り巻く問題

 中国をはじめとする海外資本が、水源となる湧き水や河川の源流などを買いあさっているのではないかとの疑念から問題視されています。日本は諸外国、特にアジア諸国と比べて海外資本に対する土地売買に関して国の規制が緩い一方、憲法による財産権の保障と民法によって土地所有権は地上及び地下にまで権利が及びます。従って、海外資本とはいえ、一旦、所有権を取得してしまえば、その権利は将来にわたって保障されます。

 こうした水資源の状況に危機感を覚える自治体が、独自に規制条例を制定しています。たとえば北海道では、「北海道水資源の保全に関する条例」を制定しています。前出のニセコ町でも「水道水源保護条例」によって規制しています。いずれの条例も、水源保護地域内に規制対象施設(水源の水質や水量に影響、水源涵養となる樹木の伐採、取水による水源の枯渇を招く恐れのある施設)の設置を禁止する内容ですが、罰則規定がない、あるいはあっても「1年以下の懲役または50万円以下の罰金(ニセコ町条例)」と、緩いのが現状です。

景観維持への不安要素

 海外資本に限ったことではありませんが、まだあまり問題視されていないものとして景勝地の景観に関するものがあります。2004年に景観法が制定され、各自治体がまちづくりに関して景観条例を改正するなど、中心地では景観に関して厳しい指定が定められつつあります。しかし、観光名所など著名な景勝地を除けば、地方の郊外では高さ制限など建物の規制がほとんどありません。従って、山林やゴルフ場跡地などの開発にあたって景観を害する建物が建つ危険性を孕んでいます。

 たとえば、地方のその地域ならではの風景が、突然ホテルやリゾートマンションといった建物の建築によって壊される可能性があります。日本の資本家と比べて合理性を追求する海外資本が開発を進める場合には、より景観の維持との開発のバランスが問題になる可能性が高いといえます。

海外資本の進出では過去にも問題があった

 北海道の中心地札幌では、08年のリーマンショック前後にも海外ファンドによる不動産市場への参入・退出によって、地域経済が大きなダメージを受けたことがあります。全国的には大きな話題とはなりませんでしたが、地元の不動産会社では語り草になっています。

 海外ファンドが札幌市内に不動産投資として賃貸用マンションを大量に計画・建設していましたが、リーマンショックが起きたことで、建設途中のままファンドが退出してしまい、未完成のまま放置されたマンションがあったり、マンションは完成したものの賃貸需要を超える供給数となってしまったため、まったく入居者の入らないマンションとなってしまったものもありました。

 このような海外ファンドの大量投資と無配慮な退出のために、札幌の賃貸市場は一時収拾がつかない状態になってしまいました。それ以降、札幌の賃貸募集の商習慣が変わってしまったといわれています。

海外資本に対する日本の土地政策は

 先進国以外の国では、所得格差もあり、外国資本(法人・個人とも)の土地(不動産)の所有権取得に対して規制や監視が行われています。例えば、東南アジア各国では、外国人の不動産購入には明確な規制があり、マレーシア以外のフィリピン、タイ、カンボジア、インドネシアなどでは海外資本は土地付き住宅の購入ができず、所有権取得ができません。

 一方、アメリカやEUなどの先進諸国は、基本的に海外資本による不動産購入の自由が維持されています。ただし、オーストラリアは、海外資本の流入は基本的に歓迎しているものの、過去に海外資本(外国人投資家)による苦い経験をさせられた国に対しては、不動産や企業の進出などに一定の制限を設け、届出や認可というかたちで確認しているケースもあります。具体的には、外国人がオーストラリア国内で不動産を購入する場合、FIRB(外国投資審議会:Foreign Investment Review Board)による購入規制があり、このFIRBの承認が必要となっています。

 日本も実態に即し、前述のように危機感を持った自治体が独自に条例によって規制を始めていますが、国による海外資本の不動産取得への本格的な対策は、まだほとんど講じられていません。

 07年1月には「観光立国推進基本法」を施行し、併せて20年には東京オリンピックの開催を控え、国策として今後ますます海外から観光客を呼び込むことを推進しています。そして、海外からの観光客が増えれば増えるほど、海外資本が日本の土地を求める可能性が高くなります。観光地として相応しい“日本らしい国土”を維持するためにも、海外資本による土地取得に対して、なんらかの方策が必要だと思われます。
(文=秋津智幸/不動産コンサルタント)

秋津智幸/不動産コンサルタント

秋津智幸/不動産コンサルタント

不動産サポートオフィス 代表コンサルタント。
横浜国立大学卒業。自宅の購入、不動産投資、賃貸住宅など個人が関わる不動産全般に関する相談・コンサルティングを行う他、不動産業者向けの企業研修や各種不動産セミナー講師、書籍、コラム等の執筆・監修にも取り組んでいる。

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