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ジャーナリズム

登山ブームで遭難者激増、年間3千人も…こんな人や行為は危険、意外な非常識行為横行

文=山田稔/ジャーナリスト
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休憩中の登山者

 16年の遭難者データを詳しくみると、70代が565人(全体の19.3%)、80代が161人(同5.5%)、そして90歳以上が10人(同0.3%)もいる。遭難者の4人に1人は70歳以上なのだ。これが高齢化社会の現実、驚愕の事実である。

 全国でもっとも遭難件数が多い長野県の今年の状況はどうなっているだろうか。長野県警の発表によると、1月1日から7月9日までの遭難件数は120件で前年比20件増。遭難者は140人で同22人増。死者・行方不明者は28人で同8人増だ。遭難者の年代別では、40代以上が95人で67.8%を占め、うち60代以上が30.7%となっている。死者・不明者は40代以上が21人で75%、うち60代以上は12人で43%だ。全国の統計に比べ、遭難者、死者・不明者における高齢者の比率が低いのは、北アルプス、中央アルプス、八ヶ岳など高山や険しい山が多く、高齢者の入山比率がやや低くなっているからだろうか。

遭難で多いのは「道迷い」「滑落」「転倒」

 16年の遭難を態様別でみると、もっとも多いのが「道迷い」1116人(38.1%)。以下、「滑落」498人(17%)、「転倒」471人(16.1%)、「病気」229人(7.8%)、「疲労」204人(7.0%)などとなっている。最近の登山道は整備が行き届いているので、分岐ポイントなどにはわかりやすい標識が設置してある。しかし、山の天候は急変しやすい。ガス(霧)が出てきて標識を見落とす、疲れて下ばかり見て歩いていて別の道に迷い込んでしまうといったケースもある。

 気を付けたいのは下山時だ。朝早くに自宅を出て登山口まで行くから、その時点で知らないうちに体力は消耗している。そこから山頂まで2時間から3時間かけて登り、登頂までに体力を使い果たしてしまいかねない。その日のうちに下山するようなケースでは、疲弊した体で歩くうちに石や木の根に足を取られ転倒する、あるいは斜面を滑落してしまうというのが最悪のパターンだ。

 ある山小屋の関係者が、こんな話をしていた。

「若いころに山登りをやっていて、定年後に再開したという人が危ない。なまじっか山を知っているだけに、体力が落ちているのに若い頃と同じ調子で登ってしまう。それで下山途中につまずいて転んだりする。山歩きは計画を立てるときから始まるということを忘れてはいけない。読図、気象判断などの基本知識に加え、必要な装備・食料をそろえ、自分の体力・経験に応じたルートを、他人任せでなく自分自身で判断することが大事」

 遭難は高い山、険しい山だけの話ではない。標高500メートルぐらいの低い山にも危険は常にある。子ども連れ登山も注意が必要だ。

 今回の北八ヶ岳では、幼児を肩車して歩いている若い父親がいた。一見、ほほえましい光景だが、実は危なっかしい行動だ。子どもの頬に木の葉が触れていたが、枝先が目に当たったりしたら一大事である。また万が一、親が転んだらどうなるか。「高い山じゃないから平気」と考えるのは禁物だ。

 山岳遭難は、本人が苦しむだけでなく、家族や救助関係者など多くの人に迷惑をかけてしまう。入念な準備と身の丈に応じたルート選択、そして余裕を持った行動で、事故のない楽しい山歩きを楽しみたいものである。
(文=山田稔/ジャーナリスト)

美しい池と原生林が広がる(白駒池)

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