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松村太郎「米国発ビジネス&ITレポート」

テスラ、トヨタ等の標準的セダンとの競合車投入…未知の快適運転体験を実現

文=松村太郎/ITジャーナリスト
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 しかし電気自動車であるテスラは、これまでのガソリン車の運転感覚を踏襲しつつも、異なる体験を提供してくれる。簡単に言えば、ほとんどの場面で、ブレーキを使わず運転できるようになるのだ。

 アクセルを踏み込むと、ギアチェンジなしでリニアに加速していく。そしてアクセルを弱めたり、ペダルから足を離すと、発電する抵抗でしっかり減速する。この減速を利用することで、ブレーキペダルを使わず、アクセルペダルの調節だけで運転ができる。慣れてくると、これがなかなか快適なのだ。

 そして、前述の2つ目の強みに挙げたオートパイロットは、高速道路においては、車線維持、車速維持もしくは先行車追従、方向指示器を出すだけでの車線変更を行うことができ、ハンドルに触れていればアクセルから足を離してもよくなる。

 流れているとき以上に、朝夕激しいシリコンバレー周辺の幹線道路の渋滞時にメリットを強く感じる。通常なら1時間程度の距離の通勤に、片道2時間もかける人が少なくないような劣悪な交通事情において、オートパイロット機能は日々の生活をガラリと変える光とも評価できる。

 Model 3にはこの機能を実現するハードウェアが採用されており、3万5000ドルでフル機能のオートパイロットが手に入るならば、競合車と比較しても非常に高い競争力を誇ることになる。

期待とリスクが入り乱れる

 マスク氏がModel 3の納車の計画についてツイートして以降、テスラ株は急落している。7月3日370.13ドルを付けていた株価は、307.94ドルを付け、16%を超える下落となった。

 これまで、Model 3によってテスラが飛躍的に顧客の数を増やすことで、自動車メーカーとしての脱皮に期待して買われていた株が、Model 3の納車日程が決まった事実で利益確定売りが出たことも考えられるが、懸念材料としては、マスク氏が掲げた生産計画への疑問だ。

 筆者は今年1月に、シリコンバレーの対岸の都市フリーモントにあるテスラの組み立て工場を取材したことがあるが、建屋の3分の1以上のスペースが、Model 3のライン向けに確保してあった。ペイントショップと呼ばれる塗装工程は、1週間に1万台の塗装が行える能力を有しているという。組み立てのペースを早めていくことに問題はなさそうだ。

 一方で、電池の確保についての懸念が強まっている。前述のように、Model S、Model Xとは異なる新しいセル、2170を使用するModel 3は、当初、バッテリーの確保が生産のネックになると考えられているのだ。ただ、こちらについても、供給が安定してくれば、問題としては小さくなっていくことが期待できる。

 またテスラのラインアップのなかで、テスラの収益構造が変化する事へのリスクもある。Model SやModel Xの顧客が、最新のModel 3へ乗り換えていくことになると、平均販売価格は2分の1から3分の1程度に下がってしまうことになる。マスク氏も、「Model 3はModel SやModel Xの代わりにはならない」と別の車であることを強調するが、顧客はどう反応することになるだろうか。

 一方で、テスラという企業に対する期待の声も大きくなっている。米アップルに強いテクノロジーアナリストとして著名なジーン・マンスター氏は、iPhoneを引き合いに出し、「2007年に500万台しか売り上げなかったiPhoneは、2015年に2億3200万台を販売した」とし、ソフトウェアほどではないが、ハードウェアもスケールするとの見方を示した

 テスラは生産拠点の中国への拡大によるハードウェアのスケールや、Solar City買収と家庭用バッテリーといった電気自動車を前提とした住環境へのビジネスの拡大、そしてテスラのソフトウェア更新やその機能の販売、音楽サービス参入の噂など、電気自動車を核としたアクセサリーやアプリビジネスへの拡大を行っている。

 テスラは、次のアップルになるのかどうか。そのアップルもまた、自動運転技術に対する投資を行っていることをティム・クックCEOが明らかにしており、ハードウェア主体のシリコンバレー企業に、引き続き注目していくべきだ。
(文=松村太郎/ITジャーナリスト)

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