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蒲谷茂「自分のからだは自分で守る」

人工透析、1日おき通院&ベッドで4時間拘束が「不要」な方法

文=蒲谷茂/医療ジャーナリスト
人工透析、1日おき通院&ベッドで4時間拘束が「不要」な方法の画像1「Thinkstock」より

 私は現在、末期の腎不全で透析の一歩手前にいる。腎不全にまで至ってしまうと回復不可能で、生き続けるためには腎臓移植か人工透析を受けるしかない。

 人工透析には2種類あり、血液透析と腹膜透析がある。私は透析でも腹膜透析を選んだ。

 人工透析に多少知識のある人でも、まず思い浮かべるのは血液透析だろう。病院にほぼ1日おきに通い、血液をきれいにする機械を使って、不要なものや有害なものを血液から取り除いてもらう。患者は病院に1日おきに通うのは大変だが、それ以外は食事に注意するぐらいで、治療はすべて病院やクリニックに任せてしまうので、ベッドに横になっているだけ。

 一方、腹膜透析は基本的に患者自身が行う。自分のおなかの中に透析液を入れ、そこに腹膜を通っている血管から不要、有害なものを排出させる。有害なものを含んだ透析液は排液し、新たな透析液を腹部に入れる。これを1日に3~5回くり返す。毎日しなければならないが、病院に通う必要はない。もちろん、4時間近くベッドに拘束されることもない。

 ただし、透析液を交換するときは、衛生状態に十分に気を配る必要がある。腹部からカテーテルの一端が出ていて、そこに透析液のバッグをつなげて、透析液を入れたり、汚れた透析液を排出したりするのだが、このときに、細菌などが入っていかないようにする。

 もちろん、普段から外に出ているカテーテルには注意を払わなければならない。透析液を腹部に送り込むためにカテーテルは、腹部の中を回っているので、からだの外に出ている部分も清潔さを保つ必要があるからだ。外に出ているカテーテルは腹部の中と直結しているといってもいいだろう。出ているカテーテルの出口部分が炎症を起こしていないか、痛みなどはないか、浸出液のようなものは出ていないかという観察が必要だし、消毒などは欠かせない。これを怠ると腹膜炎や出口部に感染を起こしてしまう可能性があるからだ。これらすべてを自分でしなければならない。自己管理がたいへん重要なのである。

腹膜透析が普及しない理由

 7460名。これは透析を受けている人のなかで、腹膜透析を選んでいる人の数である。

 日本透析医学会が2015年に調査した結果を発表している。一方、血液透析をしている患者は25万8374名。透析を受けている人で腹膜透析を選んだ人は、わずか2.3%だ。

 腹膜透析をしている患者数が極めて少ないのは、やはり自己管理が難しいからだろうか。

 欧米諸国での腹膜透析の普及率は7~22%。腎臓移植が一般化している欧米では、最初の選択として腹膜透析を行いながら、移植を待つというような状況のようだ。移植を受けずに腹膜透析を続ける人ももちろんいる。

 日本ではドナー不足などの影響で移植が一般的でないために、その前段階の選択としても腹膜透析を選ぶ人が少ない。腹膜透析が普及しない理由のひとつは、医療者の不足がある。血液透析が多いこともあって、患者数が増えないので、腹膜透析を学ぶ機会が少ない。その結果、腹膜透析に詳しい医師や看護師も少ない。

 しかし、病院に通いながら透析をしている場合も、病院が自宅から遠いところにあり、通うのに3時間以上もかかる人もいる。そういう地域に住んでいる透析患者は腹膜透析を選んだほうがいいのではないだろうか。また、高齢者で病院に通えなくなったり、車で行くことが難しくなったりする可能性が考えられるなら、腹膜透析を選択したほうがいいだろう。

 高齢化社会になり、透析患者は増えていく。透析しなければならなくなったとき、腹膜透析も選択肢に入れてほしい。また、糖尿病患者が増えていることもあり、透析に至る人も随分と出てくると予想できる。腹膜透析を選択する人が増えれば、それに詳しい医療関係者も増えて、透析の状況も大きく変わっていくに違いない。
(文=蒲谷茂/医療ジャーナリスト)

蒲谷茂

蒲谷茂

医療ジャーナリスト。1949年生まれ。立教大学卒業後、健康雑誌『壮快』の編集にかかわり、8年後に独立。多くの医療・健康に関する雑誌の編集・執筆、テレビ番組の企画・制作にも携わる。95年『大丈夫』(小学館発行の健康雑誌)の創刊編集長に就任。その後、30年以上にわたる経験や人脈を生かし、自分のからだは自分で守るための情報を発信し続けている。著書は、『民間療法のウソとホント』『歯は磨くだけでいいのか』(共に文春新書)、『測るだけで大丈夫』(八重洲出版)、『死に至る病・チェックブック』『自宅で死にたい』(共にバジリコ)などがある。現在、八ヶ岳南麓に住み、エフエム八ヶ岳のパーソナリティもつとめている。

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