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岡田正彦「歪められた現代医療のエビデンス:正しい健康法はこれだ!」

「最高学府」東大、科学論文捏造が波紋…不正蔓延の科学界、STAP論文は氷山の一角か

文=岡田正彦/新潟大学名誉教授
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捏造が多い薬に関する論文

 捏造がもっとも多いのは、薬の評価に関する論文です。効果がないにもかかわらず、あったように見せかけたり、あるいは副作用を隠蔽したりすることが日常茶飯事となっています。その実例は、これまで当連載で紹介してきたところです。

 最近、目立つのは、ビジネスがらみのダイエット法に関する論文の捏造です。英国医師会雑誌は、「低脂肪、かつ食物繊維豊富な食事が死亡率を半減させる」と結論したある論文を悪質な捏造だと断定しました。きっかけは、死亡率を低減させる効果が不自然に大き過ぎたためでした。名指しされた著者ラム・B・シン氏は、複数の専門誌に多数の論文を載せていて、そのすべてに疑いが掛けられています【注3】。

 この種の研究で主役となっているのが統計学ですが、悪用する方法はいろいろあります。たとえば、不都合な数人分のデータをなかったことにするだけで、結論を簡単に逆転させることができるのです。最近、日本国内で話題になった血圧の薬ディオバンにかかわる捏造事件でも、同様の手口が使われたとされています。

捏造のテクニック

 さて、今回東大が発表した捏造のひとつは、電気泳動と呼ばれる実験データの提示の仕方にありました。この技術は、目に見えない微小な物質をゲル上で分離し、染色で映像化するというものです。

 私が行った電気泳動のデータを用いて(本件研究テーマとは無関係)、捏造のテクニックをシミュレーションしてみましょう。仮に、細胞に脂肪を与えるとたちどころに出現する新物質(らしきもの)を発見したとします。もし、この物質が脂肪だけに反応するとしたら、肥満を抑える夢の薬が生まれるかもしれません。

 図1は、元データです。脂肪Bで刺激したところ、明らかに新物質が太い線として映像化されていますが、残念ながらそれ以外の刺激Aでも出現してしまっています。このまま発表しても、新発見とはみなされず査読で不合格となってしまうかもしれません。

「最高学府」東大、科学論文捏造が波紋…不正蔓延の科学界、STAP論文は氷山の一角かの画像2

 そこで、画像処理ソフトを使って以下の図2、3に示したような操作を行ってみます。

 すると刺激Aで反応していた線が消え、脂肪にしか反応しない新物質であることを見事に証明したデータに生まれ変わったように見えます。

 このたびの告発で指摘を受けた論文は細胞分裂の仕組みに関するものでしたが、指摘されたような捏造が見過ごされた場合、後世にどんな影響を与えることになるかは誰にもわかりません。しかし、研究テーマによってはヒトの命に直結する事態に発展しないとも限りません。

 報道によれば、同じ研究者に14億円を超える研究費が集まっていたそうです。この種の研究テーマで使い切れる金額ではなく、ちやほやした国や大学、企業などにも重大な責任があったでしょうし、「過剰な顕示欲」「モラル崩壊」などの言葉も頭に浮かんできます。
(文=岡田正彦/新潟大学名誉教授)

●参考文献
【注1】Galbraith DW, Redrawing the frontiers in the age of post-publication review. Front Genet 6: 1-6, 2015.
【注2】Haug CJ, Peer-review fraud-hacking the scientific publication process. New Engl and Journal of Medicine 373: 2393-95, 2015.
【注3】White C, Suspected research fraud: difficulties of getting at the truth. BMJ 331: 281-8, 2005.

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