「HVシステムを搭載するだけで何十万円も価格が上がるが、それに見合う二酸化炭素(CO2)削減効果は得られない。内燃機関を低燃費化したほうが消費者のためであり、より効率的」(マツダ関係者)

 また、トヨタが市販している燃料電池車(FCV)に対しても「あんなものが普及するわけがない」と言い切るマツダ関係者もいる。マツダの開発部門では、HVやFCVに力を注ぐトヨタを「お金があるところは、無駄なものに投資する余裕があっていいですね」と冷めた視線で見る。

 一方で、トヨタ側の開発部門にも抵抗がある。2年前の業務提携締結合意の記者会見で、豊田社長がマツダ車の環境技術やデザインを褒め称えたことに対して、トヨタの開発部門の多くが「(トヨタから見れば)弱小メーカーのマツダから学ぶことはない」と反発する声が広がったという。業務提携を結びながら2年間、具体的な成果が出なかったのは、経営トップ同士の思惑とは裏腹に、両社の現場の社員からの賛同を得られなかったことが主な理由とみられる。

 実際、豊田社長は今回の資本提携発表の記者会見で、2年前のマツダとの業務提携から得た一番大きな成果について「マツダに負けたくないという、トヨタの負け嫌いに火をつけていただいたこと」と嫌味を述べている。

環境規制の強化

 ただ、グローバルで進む環境規制の強化が、両社を提携強化に駆り立てた。それがEVの普及に向けた動きだ。英国、フランスが40年以降、内燃機関車の販売を禁止する方針を打ち出したほか、インドや中国では、自動車メーカーにEVなどの環境対応車の一定以上の販売を義務付ける見通しだ。これに対応して自動車メーカー各社は一斉にEVの市場投入を本格化させる意向だ。フォルクスワーゲンとダイムラーは、EVの投入を加速し、25年までに世界販売の25%をEVにする目標を掲げる。

 トヨタは環境対応車としてHVを本命視、その後はPHVにシフトして、将来的なエコカーとしてはFCVが普及すると目論んでいた。EVは航続距離が短くて価格も高いことから都市部の輸送などに限られるとみていた。

 しかし、こうした予想は完全に外れる。HVは環境対応車として認められなくなり、EVが環境対応車の本命として浮上してきた。こうしたなか、トヨタは昨年12月に系列サプライヤーも巻き込んでEVの開発に本腰を入れ始めたが、出遅れ感は隠せない。マツダはマツダで内燃機関車に的を絞ってきただけに「想定していたよりも早いペースでEV化する可能性が出てきた」と焦りの色を濃くする。

 世界でEV化の流れが加速する危機感から、トヨタとマツダの経営陣は、提携を強化することで意見が一致。これを実現するためには、開発を中心とした現場の人間の理解が欠かせない。そこで資本提携に踏み込むことで合意した。

 資本提携では、トヨタがマツダに5.05%出資するとともに、マツダもトヨタに0.25%出資する。出資比率は大きく異なるものの、出資額は500億円と同額にした。マツダの社員には「トヨタとは対等の関係」であることを示し、トヨタの社員にはトヨタがマツダの第2位の株主で立場の違いを理解してもらうという、それぞれのプライドに配慮した。ただ、これでお互いのわだかまりが解消するのかは不透明だ。

 保護主義が台頭する米国戦略や各国で規制が強化される環境対策に背中を押されるかたちで、資本提携に踏み切ったトヨタとマツダ。自動車業界からは「EVに出遅れている者同士が手を結んでも怖くない。ここに(EVに遅れている)スズキやスバルも加わったらEV弱者連合の完成だ」と揶揄する声もある。

 両社が提携事業を成功に導くために融和できるかも含めて、トヨタとマツダの資本提携の成否は予断を許さない状況だ。
(文=河村靖史/ジャーナリスト)

RANKING
  • 企業・業界
  • ビジネス
  • 総合

関連記事