村西監督が大病を患い入院した際、医者に言われた言葉が胸に染みた。

「何千人の死を看取ってきたが、誰一人諦めていなかった。『もうだめだ』と口では言いつつ、『ひょっとしてよくなるかも』と信じながら生きている。余命宣告なんて余計なことです。今日より明日、病気を乗り越えて元気になれるかもしれない……という希望のうちに死んでいくのです。そう、先生はおっしゃいました」

 人間は、そもそも絶望しようとしても、絶望できないもの。誰もがDNAの中に、祖先から受け継いだたくましさ、力強さを持っている。その強さを信じるべきだと、村西監督は語る。

「私たちは死から解き放たれるべきです。私たちは自分の死を見ることはできません。何千億円払っても、見られないのです。つまり、私たちの人生に死はないんですよ。だから、そんな経験することすらできないことで延々と悩んだり、消耗していく必要はありません」

「天職がころがっている」など幻想

 しかし、現在の若者たちの悩みも深い。たとえばブラック企業で過重労働を強いられている人たちは、どのようにその状況を乗り越えたらよいのだろうか。

「ナンセンスの極みですね。なんの物的資源もない日本人が働かなくてどうするの? と思います。先日中国に行きましたが、皆さん1日に2個、3個と仕事を見つけてバリバリ働いています。私も若い頃は『なぜ1日が24時間しかないのだろう? 36時間あればいいのに』と毎日思っていました。

 現状にああだこうだと文句を言っていても、仕方がありません。汗と涙と情熱でがんばって働いて生きていかなきゃならないんです。働き過ぎが悪いことだと思う人は、たぶん左翼の運動家に洗脳されているのでしょう」

 働くこと自体は嫌ではないが、自分のやりたい仕事が見つからない、本当に自分が何をやりたいのかわからない、という若者も多い。

「自分にとっての天職がどこかにころがっている、なんていうのは幻想です。AV監督なんて仕事は、そもそもなかったのです。AV監督という仕事をつくった私でも、AV制作をただのおカネを稼ぐ手段だと思っていたら、天職にはならなかったでしょう。どうすれば喜んでもらえるかを一生懸命考えて作品をつくり、私のAVを手に取った人の喜ぶ顔を見て、結果、いつしか天職になっていくのです。『自分探しをしている』なんて言う人がいますけど『馬鹿か! 一生探してろ!』と思ってしまいます」

 監督いわく、「人生は喜ばせごっこ」だという。人生において他人をいかに喜ばせるか考えて行動すること、それが一番大事なことだと教えてくれた。

 つまり、壮絶な人生を生きてきた村西とおる監督が最後に行き着いた答えは、「無償の愛」だったのだ。
(文=村田らむ)

●プロフィール
村西とおる(むらにし・とおる)
1948年、福島県生まれ。高校卒業後に上京し、水商売、英会話教材や百科事典セールスなどを手がける。ゲームリース業で成功を収めたのち、裏本製作販売に転じ、北大神田書店グループ会長に就任。わいせつ図画販売容疑で逮捕され、保釈後の84年、AV監督となる。88年にダイヤモンド映像を設立し、多くの人気作を生み出したものの、衛星放送への投資失敗により、92年に50億円の負債を抱えて倒産。現在、映像関連事業のほか、その個性的なキャラクターで幅広く活躍している。

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