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時代錯誤の設定、視聴者置いてきぼりの構成…『ごめん、愛してる』がヒットしない理由

文=松庭直/フリーフォトライター
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gomen550.jpg「Thinkstock」より

 韓国で大ヒットしたドラマ『ごめん、愛してる』が日本でリメイク。TBS系にて放映中だが、日本での視聴率はイマイチ伸びず、苦戦を強いられているのが現状だ。今回は、その原因を検証してみたいと思う。 

 原作ではスター歌手だったキャラクターがピアニストになっていたり、大女優役だったところが大物ピアニストになっていたりと、設定に若干のアレンジはされているものの、ストーリーの基軸は韓国の原作ドラマになぞられて書かれている。

 ストーリーを簡潔に述べると、母親に捨てられた主人公が実の母親を探し出す。しかし、そこにはすでに息子がいて、母親に溺愛されている。それを見た主人公は自分を捨てた母に復讐を誓う――と、ストーリーだけみれば、ドロドロ展開満載の昼ドラ仕様の陳腐なストーリーである。

 原作ドラマで異なる点で印象的だったのは、長瀬智也演じる岡崎律が携帯で自撮りをして、動画メッセージを残すというシーンが若干のアレンジというところか。でもこれも、最後、主人公が死んだ後にどうせ母親が見る、という感動ストーリーになるんだろうなあと安易に予測できてしまうが、果たしてどうか。ちなみに韓国ドラマでは、主人公が実の息子だったということは、伏せられたままジ・エンドだった。

 正直、古臭さのフルコース。“死”や“格差”、“いじめ”といった王道すぎるソースを現代風にアレンジすることなく、そのまま垂れ流しにするもんだから、時代錯誤感が甚だしく正直ついていけない。

 言ってしまえば、90年代の人気ドラマ『家なき子』(日本テレビ系)や『人間・失格〜たとえばぼくが死んだら』(TBS系)などを見せられているようなもので、人間の汚い部分(これは今でも一緒)をストレートに見せていた90年代とは違い、今は2010年代。人間の汚さ、泥臭さは変わっていないが、臭いものに蓋をしろ感がすごい。いじめを助長するからとバラエティー番組は規制が厳しくなったし、お色気番組だって減った。今やBPO天下のテレビ業界である。人間の煩悩が制御された状態の、いわば人間総IT化時代到来。

 話はそれたが、よって昨今は、昨年の『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)に代表される、結婚できないやらしないやらといったかる~い恋愛ものがヒットするように、重いテーマを描くドラマは、ドラマ自体に引き付ける要素が相当ない限り、視聴率を獲得することは厳しいといえる。

 その問題のドラマだが、まず『ごめん、愛してる』の場合は設定がぶっ飛び過ぎている。このドラマの主人公は母親に捨てられたが故、不自由な生活を強いられている。一方、その母親は著名なピアニストで何不自由のない贅沢な暮らしをしているという設定なのだが、日本では韓国ほど捨て子も多くなく、そこまで格差に敏感ではない。韓国の社会的背景を下敷きとした設定をそのまま日本に持ち込んでも、共感を得ることは難しいといえる。

 そしてもう一つ。ヒットしない最大の原因はドラマの構成にあると言わざるを得ない。ただでさえ突飛な背景であり、感情移入がしづらい設定だ。そこで必要となってくるのは、その背景や設定を飛び越える、視聴者を引き込むセリフ回しや、視聴者を裏切る展開やスリルだ。しかし、残念ながら、このドラマにはそのセリフや展開が不足しているように思われる。その影響で、このドラマにつきものの矛盾点が浮き彫りになってしまうのだ。

 たとえば、前回の第6話での大西礼芳演じる古沢塔子が、坂口健太郎演じる日向サトルに、意思疎通が図れない寝たきりの父親を紹介するシーン。日向が手を握った瞬間、父が覚醒し、そのまま亡くなるという、なにこの展開!? ありなの!? と、視聴者置いてきぼりのとんちんかんな展開と設定にあ然となった。

 母親の日向麗子を演じる大竹しのぶやその過去を知る重要なキーパーソン、日向麗子のマネージャー役を務める三田恒夫役を演じる中村梅雀、そして、主人公を翻弄するフリージャーナリストの加賀美修平役の六角精児など、演技に定評がある錚々たるメンバーが脇を固めている。しかし、ドラマ自体の設定や構成がイマイチなもんだから、演者たちの演技がうまければうまいほど、その演技だけが妙に浮いてしまうという残念な結果になってしまっている。

 以上のことから、ドラマの後半戦も視聴率が劇的に右肩上がりになることはなく、原作である韓国ドラマを超えることは厳しいといえそうだ。
(文=松庭直/フリーフォトライター)

松庭直/フリージャーナリスト

松庭直/フリージャーナリスト

大手出版社の編集記者を経てフリーに。専門は生殖補助医療、地方問題、韓国・竹島問題。

Twitter:@kfT9ZfEnrQTMavT

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