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鈴木貴博「経済を読む目玉」

20年後、本当に頭脳労働は消滅し、肉体労働は残るかもしれない…AIと原子爆弾

文=鈴木貴博/百年コンサルティング代表取締役
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 一方で、もっと強力なITを開発しようという力が働いてきた。そのトレンドから誕生したのが「深層学習能力を持つAI」である。

 この流れが、1945年に投下された原子爆弾の開発と似ているという意見がある。戦争に使われる武器が強力化しても、それでもまだパワーが足りないというときに、物理学者たちが「もっと強力な武器」として発明したのが原子爆弾だった。開発するまでは「もっと強力な武器が必要だ」と言われてつくったのだが、いざ完成してみたら強力すぎて、これでは人類が根絶やしにされてしまうことが、あとから問題になった。

 ここでの本当の問題は、原子爆弾が一度完成したら後戻りできないということだ。国家間の競争がある以上、それでも開発を続けなければならない。その結果、大国には数万発の核兵器が使われないまま配備されている。

汎用的な人工知能の誕生

 AIも同じ問題を抱えている。企業間の競争で、より強力なAIが必要だという認識から開発競争がエスカレートしている。アマゾンアップルのようなIT企業は、覇権を確保するために数千億円レベルの研究開発投資をこの分野につぎこんでいる。自動車会社各社は無人で運転する自動車を先に開発した者が勝者になるという意識から、未来カーの投資はAIに集中している。投資銀行や機関投資家は運用成績で抜きん出るには、他社よりも優れたAIの開発しかないとしのぎを削っている。

 情報科学者が「深層学習」を発明してしまったことで、このAIの開発競争が2012年をターニングポイントに大きくシフトアップした。それは通常兵器と核兵器ぐらいのギャップがあるシフトアップである。

 囲碁のように閉じたルールの世界を思考するAIはすでに人類の能力を超えている。開発者のロードマップを見る限り、次は「自分の行動の影響をフィードバックして対応できるAI」が25年頃には出現するだろう。その時点でAIによる金融商品の売買プログラムは、人間のファンドマネジャーの能力を完全に超える。

 その次の段階で、AIは人間の言語を自分で学習できるようになる。30年から35年ぐらいには教えなくても人間が何を話しているのかを人工知能が学習するようになる。これが「汎用的な人工知能の誕生」である。

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