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アマゾンの一挙一動が、あらゆる業界の構造を決定付け始めた…小売業全体が衰退

文=真壁昭夫/法政大学大学院教授
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常識に挑み続けるアマゾン

 
 ビッグデータをいかに生かすかが、企業の競争を左右する可能性は高まっている。その動きに対応するためには、IT設備の増強や企業買収などの投資が欠かせない。アマゾンの業績が変動しやすいのはそのためだ。この傾向は当面続くだろう。

 見方を変えれば、アマゾンは常識に挑んでいる。これまで多くの人が、「オンラインショッピング企業は生鮮食品ビジネスには向かない」と考えてきた。足元でアマゾンが、自然食品スーパーマーケットチェーンである米ホールフーズ・マーケットを買収したのは、物流も含め新しいビジネスのシード(種)をまき、事業ポートフォリオの分散を高めるためだ。今回の買収によって、アマゾンは生鮮食品の管理や効率的な物流のノウハウを吸収し、“シナジー”を生み出すことを狙っている。

 わたしたちはグーグル等で必要な情報を検索し、その情報をもとに別のウェブサイトを閲覧することが多かっただろう。アマゾンが自社のネットワークシステムの拡充を進め、さまざまなモノやサービスの提供能力を高めれば、多くの人が必要な情報やモノ、サービスをアマゾンで検索し直接購入することも理論的には可能になる。そう考えると、アマゾンという企業は製造業と非製造業の両面を併せ持った組織といえる。

 アマゾンに先駆けて中国のアリババは食品の小売り事業に参入した。アリババを通して消費者は好みの生鮮食品を買うだけでなく、調理してもらうこともできる。支払いはアリペイで済ませる。従来の店舗は倉庫の役割を担い、ネット空間が店舗の役割を担う。

 こうした従来にはなかったビジネスモデルが生み出されることによって、経済全体の競争が促され、さらに新しいサービスや製品が登場するだろう。それに伴って私たちが慣れ親しんできた商習慣などの常識にも大きな変化がもたらされる可能性が高まっている。ネットワーク企業の将来性には目を見張るものがある。

 残念だが、今のところ、わが国にはそうしたネットワーク企業が見当たらない。
(文=真壁昭夫/法政大学大学院教授)

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