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大江英樹「おとなのマネー学・ライフ学」

人事評価、なぜ「自分は報われていない」と感じる?評価=勘違いの塊、一喜一憂は無駄

文=大江英樹/オフィス・リベルタス代表

 一方、評価されるほうにもバイアスは存在します。典型的なのが「自信過剰バイアス」です。客観的な評価よりも、自分の能力を高く見積もる傾向のことです。これはごく一部の人に見られる性格というわけではなく、誰もが心の中に持っている傾向です。人に対して自分の能力を自慢したり、人を見下すような発言をしたりする人たちばかりが自信過剰バイアスに陥っているというわけではありません。人には言わなくても、自分の心の中で密かに自分の能力や才能を人よりも高く評価するという傾向は、多かれ少なかれあります。

 おもしろいことに、評価する側には人によって「寛大化・厳格化」という正反対の評価傾向が出てくるのに対して、評価される側はほぼ例外なく「自信過剰バイアス」に陥っているのです。

 すると、どういうことが起きるでしょう?

「寛大化」によって実際よりも高い評価がつけられたとします。すると評価されたほうはうれしいでしょうが、ここに新たな勘違いが生じかねません。こういう自信過剰に関しては際限がないので、ますます図に乗ってしまうことも考えられます。逆に「厳格化」で実際より低い評価しか与えられないと、今度は間違いなく不満がこみ上げてきます。どちらにしても、なかなか納得のいく正当な評価にはなりにくいといえるでしょう。

バイアスを防ぐ方法

 残念なことに、人はこうした心理的なバイアスから逃れることが極めて困難です。程度の差こそあれ、人事評価には常にバイアスが生じるのは、仕方ありません。何せ人が人を評価しているのですから。そこで、こうしたバイアスを防ぐ方法は2つしかありません。

 まずひとつは、評価権者を変えること、これは会社員であれば転勤ですね。これによって評価の偏りを小さくすることができるでしょう。そしてもうひとつは、できるだけ複数の人間に評価させることです。よく360度評価とかいわれるのが、これに当たります。上司が部下を評価するだけではなく、逆の方向もあれば、一方通行よりは公平な評価となる可能性は高まります。

 実際にこのような工夫が企業の中では行われているようですが、どこまで公正な評価システムになっていたとしても、評価される側の自信過剰バイアスがなくならない限りは、不満が残ります。

 多くの人は「人事が不公平」で「自分は割を食っている」と感じているでしょうが、しょせん人事というのは人が人を評価するわけですから、ある程度の誤解(自分の誤解も含めて)はやむを得ないと考えておいたほうがいいでしょう。私の会社員生活38年の経験からいっても、人事は短期的には間違いなく不公平かもしれませんが、長期的にはバランスが取られていくものです。あまり一喜一憂しないことが大切です。
(文=大江英樹/オフィス・リベルタス代表)

大江英樹/経済コラムニスト

大江英樹/経済コラムニスト

1952年、大阪府生まれ。野村證券で個人資産運用業務や企業年金制度のコンサルティングなどに従事した後、2012年にオフィス・リベルタス設立。日本証券アナリスト協会検定会員、行動経済学会会員。資産運用やライフプラニング、行動経済学に関する講演・研修・執筆活動を行っている。『定年楽園』(きんざい)『その損の9割は避けられる』(三笠書房)『投資賢者の心理学』(日本経済新聞出版社)など著書多数。
株式会社オフィス・リベルタス

Twitter:@officelibertas

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