
都心部のコンビニエンスストアや外食産業では、もはや当たり前となっている外国人の店員。サービス業に限らず、農業や漁業などの一次産業、建設業や製造業などの二次産業の現場でも、外国人労働者の存在が欠かせなくなっている。
しかし近年、この外国人労働者たちが失踪するケースが相次いでいる。法務省によると、外国人技能実習生の失踪者数は2011年で1534人だったが、15年には過去最多の5803人と4倍弱に増加している。
なぜ、外国人労働者たちは失踪するのか。その原因は、「外国人技能実習制度」にあるという。
外国人技能実習制度の仕組みは“裸の王様”
外国人労働者は、日本の技術を学ぶことができる「外国人技能実習制度」を利用している人が多い。同制度は、「国際貢献」や「人材育成」が本来の趣旨だ。
しかし、実態はまったく違うという。そもそも、日本は外国人の単純労働者の受け入れを認めていない。一方で、農漁業や建設業など日本人が敬遠しがちな75職種では、人手が圧倒的に不足している。
そこで、深刻化する人手不足を解消するために国と経済界が手を組んでつくり上げたのが外国人技能実習制度という仕組みだが、実際には出稼ぎ目的で利用する外国人が多いという。
日本における外国人労働者の悲惨な労働環境を赤裸々に明かした『ルポ ニッポン絶望工場』(講談社)の著者でジャーナリストの出井康博氏は、外国人技能実習制度について「まるで“裸の王様”のような制度。現状のままでは、失踪する外国人が減ることはないでしょう」と指摘する。
失踪した外国人労働者は不法滞在者として日本のどこかに潜伏し、なかには犯罪行為に走る者も少なくない。この場合、「不良化する外国人」として語られがちだが、本当の問題は外国人技能実習制度の欠陥にあるという。
給料は最低賃金、裏にピンハネ同然の構造
外国人技能実習生の失踪の原因として、よく「受け入れ先企業の人権侵害」という問題が報じられる。労働現場では、外国人労働者への残業代の未払いやパスポートの取り上げなどの違法行為が蔓延しており、それに耐えかねた外国人たちが失踪しているというのだ。『ルポ ニッポン絶望工場』(講談社/出井康博)
「確かに、一部の企業による外国人技能実習生の人権侵害は否定できません。しかし、私が外国人労働者の現場を取材した印象では、10年前と比べて、パスポートを取り上げるようなブラック企業はかなり減ってきています」(出井氏)
では、なぜ彼らは失踪するのか。一番の原因は賃金の問題だ。
「外国人技能実習生の賃金は『日本人と同等以上』と定められていますが、実際には最低賃金レベルの報酬しか支払われていないのです。東京都の最低賃金であれば、1日8時間、1カ月22日間働いたとしても約16万円。そこから社会保険料やアパートなどの寮費を引くと、実習生の手元に残るのは10万円程度です。
一方、人手不足の日本では不法就労の外国人であっても就ける仕事がたくさんある。逃げ出してほかの仕事をすれば、技能実習生時代の2倍は稼げるのです」(同)
『ルポ ニッポン絶望工場』 新聞・テレビが決して報じない外国人留学生、実習生の真実。コンビニ弁当工場、新聞配達、宅配便仕分け、農業……日本人の便利な生活を末端で支える彼らが絶望し、<謀反>を起こす時、この国の生活基盤は崩壊する!
