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もはや「ありきたり」のSL、東武が巨費投入…衰退一途の鬼怒川温泉復活の狙い、失敗か

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集客効果に疑問

 だが、事はそう簡単ではない。今やSLを運行しただけで、簡単に会社のブランドが向上し、観光客が増加する時代ではないのだ。東武関係者は語る。

「今回のSL復活運転は社運をかけたプロジェクトですので、東武鉄道のみならず系列の旅行代理店、ホテルなどからも大きな期待が寄せられています。一方、東武が運行するSLはC11というタイプです。C11はそれほど珍しい車両ではなく、集客効果には疑問があります」

 実はSL運行をフックにして鉄道会社全体で利益を出すという考え方は、旧国鉄時代から試みられている。例えば、1979年に山口県の山口線でSLが復活しているが、その背景には「東京圏や大阪圏から新幹線で山口県まで行き、そこからSLに乗る」という、いわば新幹線とセットの抱き合わせ商法的な狙いがあった。

 旧国鉄分割民営化後も、JR東日本は96年から磐越西線でSLの運転を開始。磐越西線で走るSLは、歳月を経て運行区間を新潟駅―会津若松駅まで拡大。今やJR東日本の名物列車になった。磐越西線で走るSLも単体で利益を出すのではなく、新幹線とセットで稼ぐことが狙いにある。

 また、2014年からJR東日本は東日本大震災の復興を目的にして、岩手県の花巻駅―釜石駅間でもSL銀河の運行を開始。こちらも好評を博している。

 新幹線とセットで稼ぐというSLのビジネスモデルが確立する一方で、各地でSLが続々と復活運転したこともあって、SLは戦国時代さながらの様相を呈した。東武が地盤にしている関東圏だけを見ても、秩父鉄道が1988年に、真岡鉄道が94年にSLを復活運転させている。

 秩父鉄道は35.3キロメートル、真岡鉄道にいたっては41.9キロメートルもSLが走行する。東武の12.4キロメートルと比べると、規模の差は歴然としている。そうした部分からも、東武のSL運行は苦戦が予想されている。

「浅草駅から発車して東京スカイツリーを眺めながら走るという話なら、ほかの鉄道会社とも対抗できます。しかし、浅草駅発着は現実的に難しい。転車台の整備なども大変ですし、ほかの列車ダイヤにも影響が出てしまう。SL運転のために列車ダイヤが狂ってしまったら本末転倒です。また、浅草のような市街地を走らせるにはSLが排出する煙の問題もクリアしなければならない」(前出・東武関係者)

 東武が復活運行させたSLだけに、当面は活況を呈するだろう。話題性もあって、SLの雄姿を見にくるギャラリーや撮り鉄もたくさん集まることが予想される。しかし、そうした人たちは乗車してくれるわけではないから、東武の運賃収入増にはつながらない。そうした金を落とさないファンを、どう金を落とす上客に変えていくのか、といった課題の解決もこれからだ。

 社運を賭けた東武のSLの復活運行、果たして吉と出るか凶と出るか。
(文=小川裕夫/フリーランスライター)

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