
累計出荷枚数96万枚の大ヒットを記録した宇多田ヒカルの3rdシングル『First Love』(1999年4月28日発売)の歌い出しを、いまでも諳んじている方は少なくないだろう。
そう、「♪最後のキスはタバコのFlavorがした~」である。だが、2020年東京五輪さえ遠く回顧されるほどの将来には、この曲も懐メロ入りし、「Flavor」や「ニガくてせつない香り」の部分に注釈が必要となるような無煙社会が到来しているだろうか。
7月28日、ドナルド・トランプ政権下の米国食品医薬品局(FDA)が、「ニコチン量規制案」を発表した。タバコのニコチン含有量を「依存性の生じないレベルまで減らす方針」というから、「やめられない/止まらない」愛煙家諸君には、せつない悲報か、はたまた健康面での朗報だろうか。
一方でFDAは、昨年発表した葉巻(シガー)と電子タバコの規制に関しては、前者を2021年まで、後者を2022年まで、それぞれ施行延期とすることも明らかにした。
喫煙者の多くは10代でスタート
この延期理由についてFDA長官のスコット・ゴットリーブ氏は、「十分な時間をかけて、規制基準の妥当性を検証するため」と説明しているが、同氏が電子タバコ製造企業との利益相関を取り沙汰されている人物であることも念頭に置いておきたい。
また、今回の新たなFDA方針は「若者の気をひく」フレーバーに対する規制も必要との見解を示している点でも注目されている。いわゆる未成年層の喫煙問題、その入り口に焦点を当てているわけだ。
この点を大きく評価しているのは、米ノースウェル・ヘルスたばこ規制センターのパトリシア・フォラン氏だ。
「メンソールなどのフレーバーがもたらす害(=悪影響)に対処するというFDAの方針は、若者たちの喫煙を減らす重要な一歩と言えるだろう」(フォラン氏)
FDA側の見解も、「喫煙者の多くは、10代で喫煙を始めていることが過去の研究からも明らかにされており、その吸い始めの段階で阻止したいと考えている」というものだ。
一方、それとは真逆的に、葉巻と電子タバコに関する規制の施行延期については「若者に対して有害な影響をもたらす方針といわざるを得ない」(米国・肺協会:AIAのフリカ・スワード氏)との警鐘意見もある。
この点についてはゴットリーブ氏も譲らず、「我々の新たな方針で一番重要な点は、紙巻きタバコのニコチン量を減らす規制を進めることにある」と前置きし、「それでタバコの依存性を失くすことができれば、喫煙者を紙巻きタバコから害の少ない製品へと移行させられるだろう。そんなバランスのとれたアプローチを取ることが可能であると確信している」と述べている。