
9月10日に放送された連続テレビドラマ『ごめん、愛してる』(TBS系)第9話が、前週より0.6ポイント増の平均視聴率9.8%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録。一時は8.0%まで落ちていた視聴率が若干盛り返したようにも見えるが、これは第1回で記録した視聴率と同じ数字なだけに、いつまでも物語としていまいち盛り上がらないまま、結局振り出しに戻ったようなものである。
余命わずかな主人公・岡崎律を演じるのは、TOKIO・長瀬智也。律は幼い頃に母親・日向麗子(大竹しのぶ)に捨てられ、韓国の裏社会で生きてきたが、とある事件で頭に銃弾を浴び、いつ死んでもおかしくない体になってしまった。そこで、日本に帰って“親孝行”のために母親を探し出すも、麗子は心臓の弱い息子・サトル(坂口健太郎)を溺愛しており、律の正体になど気づかない。当初は怒りを感じていた律だったが、サトルの幼馴染・三田凛華(吉岡里帆)のおかげで“愛”を知る。
しかし、サトルの心臓が危険な状態になってしまったのと同じ頃、律も医者から死期が迫っていることを知らされる。そこで、律はサトルへの心臓提供を決意し、第9話では麗子にもその旨を告げた。その後、サトルは律が自分に心臓を捧げようとしていると知り、本人に理由を尋ねる。すると、律は「お前が俺の弟だからだよ」と真実を告白し、動揺するサトルを置いて病室を出て行く……という展開が繰り広げられた。
一方、今回はジャーナリスト・加賀美修平(六角精児)の謎が、大変サラッと明かされた。加賀美はこれまで、麗子の不倫と隠し子(律)の存在を世間にバラし、麗子を貶めようとしていたのだが、いつまでも彼女に執着し続けることを疑問に思った律が「何でアンタはそこまであの人にこだわんだよ?」と追及したところ、「日向麗子の不倫相手だった黒川龍臣(山路和弘)は、俺の姉貴と結婚してたんだよ!」と、暴露。この姉について、加賀美が「精神的に追い詰められて早くして死んだ」などと語ったことから察するに、自殺してしまった可能性も考えられる。加賀美は黒川を憎むと同時に、麗子も「同罪」として恨んでいたのだ。
これに対し、律は自分がもうすぐ死ぬから「弟に心臓をやることにした」と切り出し、自分の生まれてきた意味は「弟とおふくろを守るため」などと主張。そして、加賀美が姉の恨みを晴らすために生きているのを「もったいない」と指摘する。その後、加賀美が1人で泣き崩れるシーンが流れたのだが、ちょっと待ってほしい。律が死ぬのと加賀美家の問題は別件だし、あまりにも加賀美と姉が不憫ではないか。
昨今、芸能界でも不倫報道が頻出し、“不倫をした側”がバッシングを浴びるのはもはや見慣れた光景になりつつあるが、その裏で “不倫をされた側”が苦しみ続け、時には死につながり、その家族の人生までめちゃくちゃになっていることはあまり報道されることはあまりないのだが、加賀美というキャラクターを通して再認識できた。
そう思うと、不倫を「昔の過ち」として封印して生きてきた麗子の姿勢は、やはり許せない。“生まれた子どもに罪はない”とはよく言うし、私も律が加賀美に謝る必要などはないと思う。むしろ、明らかに不倫した母親が“悪”とわかっていても、それでも「守る」といえてしまう律の姿に、「どんな母親でも、子どもにとっては大事な存在なんだな」と思い知らされ、不倫の罪深さを痛感したのだった。
(文=美神サチコ/コラムニスト)