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岡田正彦「歪められた現代医療のエビデンス:正しい健康法はこれだ!」

有名なあの薬、自殺多発の副作用を隠蔽…製薬企業、告発した医師を社会的に抹殺

文=岡田正彦/新潟大学名誉教授
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有名なあの薬、自殺多発の副作用を隠蔽…製薬企業、告発した医師を社会的に抹殺の画像1「Thinkstock」より

 デイヴィット・ヒーリー医師は、英国の名門ウェールズ大学で精神科の責任者を務めていました。うつ病の専門家で、「選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)」と呼ばれる、新しい発想による一群の治療薬を検証する研究グループにも属していたそうです。

 この薬は、世界中で使われ始めていたにもかかわらず、副作用などについての情報がほとんど公表されておらず、開発した製薬企業が集めた生のデータを見る機会を得たヒーリー医師は、思いもよらぬ事実を知ることになります。

 この薬を服用した人に自殺が多発していて、その割合(未遂も含めて)が、飲んでいない人、正しく言えばプラセボ(比較のための偽薬)を服用した人の2倍以上になっていた、というものです。

 米国政府の食品医薬品局(FDA)は当時、この情報を知っていたにもかかわらず、何も対策をとっていませんでした。事実を知ったヒーリー医師は、論文にデータをまとめ専門誌に投稿しましたが、次々に拒絶されていきます。医学専門誌のほうも、一流になるほど製薬企業から広告料などのかたちでお金が集まるため、薬にとって不利となるようなデータを掲載するわけにいかなかったのです。

 ヒーリー医師の論文は、最終的に誰も注目することのない三流誌に掲載されました。「変人」「いんちき科学者」。これは、のちの法廷で製薬企業の弁護士が彼に投げかけた言葉です。

 彼の過去の研究業績は高く評価されていて、その頃、カナダにあるトロント大学の教授に就任することが内定していました。しかし彼は、その大学から「言動に問題があるから」との理由で、突然の内定取り消し通知を受け取ったのです。この大学は、SSRIをつくっている製薬企業から、6000万円を超える寄付金を受けとっていたことが、あとになって暴露されています【注1】。

医師たちの戦いも無力

 
 もうひとり、マーチン・タイチャー医師は、米国の名門ハーバード大学の関連病院に勤務する若い精神科医でした。うつ病治療のために彼のクリニックに通院していた37歳の女性に、当時、主流となっていた薬を処方したところ、みるみる体重が増えてしまい中止せざるを得なくなりました。そこで、その頃発売されたばかりのSSRIのひとつを処方することにしました。

 副作用がまったくない、素晴らしい薬と宣伝されていたからですが、しばらくして彼女は、「死にたいので拳銃を買うつもり」などと医師に訴えかけるようになったということです。2週間後、彼女は自殺をはかって多量の睡眠薬を飲み、意識不明となって病院に救急搬送されました。幸い、一命はとりとめました。

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