
柴咲コウが主演するNHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』の第37回が17日に放送された。平均視聴率は13.3%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。還俗して一農婦となった直虎(柴咲)は、龍雲丸(柳楽優弥)とともに近藤(橋本じゅん)が治める井伊谷で平穏に暮らしていた。そんな折、堺で商売を始めた中村屋(本田博太郎)から堺に来ないかとの文を受け取った龍雲丸は、一緒に堺に行こうと直虎を誘う。直虎はここを去るわけにいかないと当初は渋るが、祐椿尼(財前直見)の勧めもあり、新天地にて2人で暮らすことを決意する。ところがその頃、信玄(松平健)率いる武田の軍勢が井伊谷に近付いていた。直虎は武田への恭順を近藤に勧めるが、近藤はこれを拒否。井伊谷城に自ら火を放ち、戦わずして逃げる道を選ぶ――という展開だった。
今回は視聴者の間でも賛否入り乱れる回となったようだが、まず批判のほうから挙げてみたい。史実を重視する層からは、家康が武田軍に大敗北を喫した三方ヶ原の戦いと井伊谷落城の順序が違うことを指摘する声があった。また、史実では武田側が井伊谷城に火を点けたことになっているのに、ドラマでは城主の近藤自ら火を放ったことになっていることについても、「違う」との声があった。ただ、この程度の脚色は本作ではもちろんのことこれまでの大河でもあったことであり、ことさら目くじらを立てるものでもないと思う。自ら火を放ったのにサブタイトルが「武田が来たりて火を放つ」であったことについてツッコミを入れる視聴者もいたが、これもネタとして笑って済ませるくらいがちょうどいいと思う。
このほか、直親(三浦春馬)の忘れ形見である高瀬(高橋ひかる)が武田の間者であったことが突然明かされたわりに、それほどストーリーに絡まなかったことについても「間者という設定、必要だった?」と疑問の声が続出した。行商人を装った武田の連絡役に命じられるままに近藤を毒殺しようとするも成功せず、結局は炎に包まれた城から直虎らの手で助けられた高瀬。
長らく眠らせていた伏線を回収して視聴者をあっと言わせたまでは良かったが、どうにも設定を活かしきれなかった印象だ。高瀬役がいずれ高橋ひかるから朝倉あきに交代することはすでに発表されているため、視聴者の間では「高橋ひかるが演じる高瀬は偽物で、朝倉あきが演じる高瀬が本当の直親の娘ではないか」との予想も浮上しているが、それはそれであまり意味のない設定であるように感じる。なぜか気になってしまうキャラクターではあるので、今後何か存在意義が感じられるエピソードがあることを願いたい。