いまから6年前の2011年3月11日に発生した東日本大震災によって、首都圏では鉄道網が一時的にせよほぼ完全に寸断され、大量の帰宅困難者が発生したことは記憶に新しい。三菱総合研究所によれば、帰宅困難者は約860万人に上り、うち約260万人は帰宅を断念し、残り約600万人は徒歩で帰宅したという。東京都内の主要道路は徒歩による帰宅者、そして自動車によって大渋滞が引き起こされ、大きな課題を残してしまった。
首都圏の鉄道への影響は震災翌日の3月12日中にはほぼ解消されたものの、週明けとなる3月14日には再び深刻な問題が発生してしまう。重大な事故を起こした東京電力福島第一原子力発電所をはじめ、多くの発電所が震災の影響で満足に稼働できないなか、東京電力は日時や地域を定めて計画停電を実施した。
この結果、JR東日本をはじめとする鉄道事業者は列車を満足に走らせることができなくなり、震災当日に匹敵する混乱が生じたのである。特に千葉県千葉市を代表するターミナルであるJR東日本千葉駅、京成電鉄京成千葉駅では東京方面に向かうすべての鉄道がストップし、両駅の構内は通勤、通学の足を奪われた人たちであふれた。
首都圏で起きた一連の交通混乱の要因は、鉄道によって都心部に流入する人の数が極めて多いからだ。国土交通省は不通となった鉄道の利用者のためにバスの増便や終夜運転をバス会社に求めたというが、バスのもつ輸送力ではまったく歯が立たない。そのうえ、主要道路は大渋滞を呈しているので、鉄道に代わる交通機関として期待することは困難だ。結論を言うと、輸送力の大きな鉄道の代替となる交通機関はほかに存在せず、東日本大震災のように鉄道が広域でストップした場合は、復旧を待つほかないのである。
そこで、各鉄道の輸送力を示していこう。例として挙げたいのは、首都圏、名古屋、京阪神の三大都市圏の都心部に鉄道によって流入する人の数だ。会社や学校に通う人々で平日の朝にはラッシュとなる。その数も取り上げるので、今後の帰宅困難者対策に役立ててほしい。
算出に当たり、首都圏では東京・大手町・上野・飯田橋、五反田・目黒・渋谷、新宿、池袋の各駅方面、名古屋圏では名古屋、栄・丸の内の各駅方面、京阪神圏では大阪・梅田・京橋・北新地・北浜、天王寺、大阪阿部野橋、難波・谷町六丁目の各駅方面と、名だたるターミナルを目指す鉄道の利用者数をもとにした。地下鉄の多くはこれらのターミナル同士を結び、乗り換え先としての機能を果たしている。したがって、都心に集まる人の数を集計するという観点では重複が生じてしまうので、他の鉄道と接続せずに郊外から都心部に乗り入れる路線を除いて省いた(対象の路線・区間は文末の一覧をご参照ください)。出典はすべて『平成26年版 都市交通年報』(運輸総合研究所、2017年6月)で、調査年度は12年度だ。