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ジャーナリズム

任侠山口組・織田代表襲撃事件は「おどし目的の単独犯か」 …元ヒットマンが映像、現場の状況、ヤクザの心理などから解析

文=藤原 良
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目的は「殺し」ではなく「おどし」だった

 組としての作戦だった場合、一人目のヒットマンが仕損じたことを想定して、必ずもう1人以上のヒットマンを配置する。見張り役や見届け役のほかに、総勢3~4人のヒットマンが投入される。つまり、少なくとも合計で5~7人の襲撃隊が現場にいることになるが、防犯カメラの映像と周辺から得た情報では、それほどの人数のヒットマンも襲撃隊もいなかった。はじめから織田代表の周辺にはボディガードが密着していることは誰もが理解しているという状況下、つまり、襲撃時に相手側からの反撃が絶対にあるという設定下で“必殺”を狙う場合、組としてこういった作戦がたてられることはまずないのである。

 任侠山口組サイドは、事件後に「総勢3人の男たちに襲撃された」と関係者に説明していることから、「その人数の少なさ」が単独説を色濃く物語っている。

 また、組の作戦に従事したヒットマンなら、失敗回避のためにその場にいるヒットマン全員が全弾発射しなければならないが、今回の事件ではそういった人員編成にもなっていなければ、菱川容疑者だけが拳銃を2発発射したにすぎなかった。

「ターゲットを殺る」ことを徹底的に追及する組の作戦だった場合、このようなやり方は絶対にないとAさんは強調する。

 さらにAさんは、こう説明する。

「そもそも車(織田代表が乗った車)にぶつけた場合、その時点で相手は警戒態勢になって絶対に車の外に出なくなり、殺るほうは余計にやりづらくなるので、こういった計画はベテランの誰かが必ず変更させます。ぶつけなくても、車(菱川容疑者の車)を道路の中央に止めて、相手の進路の邪魔をするだけにしたほうが「おい、コラァ」といった感じで車から降りて来る可能性が高まります。どっちにしろ、殺る時はぶつけるようなマネはしません」

殺害目的ならヒットマンは3〜4人は必要

 過去にも、車を衝突させて相手が身動きできなくなった瞬間を狙った襲撃事件もあったが、その際は、身動きがとれなくなった車ごと銃撃している。今回の事件では、菱川容疑者は織田代表が乗った白いワンボックスを銃撃してはいない。

 この状況から、Aさんは「状況から見て、(菱川容疑者は織田代表を)殺るところまでは考えてはいなかったのではないか」と話した。

 菱川容疑者と仲間たちは、織田代表を殺るところまでは考えてはおらず、いわゆる「おどし」程度で済ませるつもりだったのではないか、というのが元ヒットマンとしてのAさんの見解だ。「だいたい防犯カメラの近くで狙うのも変だ。おどし程度の予定だったからだろう」と繰り返す。

 当初の予定は、織田代表を乗せた白いワンボックスに衝突して、停止したところで、菱川容疑者が車両に拳銃を1発撃ち込んで逃走する、というものだったのだろうとAさんは推測する。いわゆる、ガラス割りやダンプ特攻にも似た破壊行為のような「おどし」であり、「警告」のようなつもりではなかったか。

 そこで、「もし仮にAさんがこの状況下で織田代表を殺るとしたら、どうするのか」と質問してみたところ、「もし、どうしても車をぶつけて相手の動きを止める必要があったとしたら、そっちは(菱川容疑者が乗って来た車)、相手の動きを止めるためだけの囮みたいな役にして、相手がそっちに気をとられている隙に、後ろから、3~4人の本当のヒットマンたちがやって来て、車ごとハチの巣にする」と返答した。

 相手の車が総防弾仕様だったとしても、あの状況下で相手を殺るのなら、こうするほかなく、相手に反撃されることも想定すれば、ぶつかりに来た車は、足止めをして相手の気をそらすためだけの道具にするしかないとAさんは話す。だが、そもそもこの話の中でも、相手がすぐに警戒態勢になることや、相手からの反撃対策を考えれば、ターゲットを確実に殺るうえでかなりの無理が生じている。やはり、今回の件は、織田代表を殺るところまでは考えていなかったのではないかと繰り返し述べた。

 早い話が、このような計画に「命を懸けるヒットマンはいない」というわけである。よって、組の指示でもなければ、そもそも菱川容疑者の目的は任侠山口組に対しての「おどし」だった可能性が高いというわけだ。