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任侠山口組・織田代表襲撃事件は「おどし目的の単独犯か」 …元ヒットマンが映像、現場の状況、ヤクザの心理などから解析

文=藤原 良
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防犯カメラの黄緑色の男の役割は?

 Aさんの話の中で、この状況下なら、本当のヒットマンは後方から来るとあったが、今回の件でも、防犯カメラの映像には、任侠山口組御一行の後方からやって来る黄緑色の服を着た男の姿が映っている。しかし、その男は銃撃に加わることなく速やかにその場から立ち去っている。

 防犯カメラに映っていた黄緑色の服を着た男は「サポート役で、銃撃した奴の仲間でしょう」とAさんは説明した。黄緑色の服の男がカメラを持っていたのと、射殺事件前に、建物の外階段に上って、踊り場から周辺を見ていたことが、見張り役としてのサポートの動きそのものだという。

 ヒットマンなら、わざわざこんな目立つ行動をとったりはしない。見張り役として彼は階段の踊り場から、織田代表を乗せた白いワンボックスの動きを近隣の車中で待機していた菱川容疑者に伝えるためにそのような行動をとったと推測された。また、見張り役だけでなく見届け役も兼務したサポートとして、菱川容疑者と任侠山口組御一行のやり取りをカメラで撮影する予定だったのだろうとAさんは話した。これもつまりは「おどし」で済ませる計画だったからなのだろう。「殺し」ならば、相手も徹底的に反撃してくるので、撮影などしている余裕はなくなるが、「おどし」ならばそれだけ相手の反撃の勢いも少なくなる。サポート役がカメラを持っていたことからも、今回の件がおどし目的だったとAさんは断言する。

 ヒットマン経験があるAさんに言わせれば「殺しの現場に、サポート人がカメラなんか持って来たら、普通のヒットマンなら、半端なく怒りますよ。もしくは延期にします」とため息交じりで話す。
 
「ガラス割りやダンプ特攻にも似た『おどし』や『警告』の類として、単独で菱川容疑者と仲間たちがその計画を実行した。織田代表を乗せた白いワンボックスに1発撃ち込むだけのはずが、織田代表の警護役だった楠本氏と菱川容疑者が予定外の取っ組み合いの喧嘩となり、その争いごとの中で、菱川容疑者が撃った弾丸が楠本氏を死なせたといったところではないか」(Aさん)

 菱川容疑者の身分証と一緒に拳銃2丁が発見されたことについても、「自分が単独でやったことをアピールしたくてそうしたんでしょう。もし、誰かが彼のせいにしたくてそうしたのなら、わざわざそんなマネをしなくても、捜査員に言えばいいだけですから」と分析する。

今になって、「おどし」をかける必要とは

 菱川容疑者が事件直後に自首をせずに逃亡している点については「おどして逃げるつもりが、殺しになってますからね」とだけAさんは話した。

 菱川容疑者は事件前に、所属していた団体から「飛んだ」状態で破門にされている。「飛んだ」状態とは「自ら行方をくらませて音信不通」になることを示す。菱川容疑者が、「飛んだ」状態になった時、周囲の者たちは「こんなご時世だからあいつも“飛んだ”か」と口々に言い合ったとの情報がある。

 しかし、自分からいなくなったにもかかわらず、なぜ今になって、任侠山口組に対して「おどし」をかける必要があったのか。

 Aさんは「不祥事を起こして破門にされた場合は、その後の復縁は簡単ではないが、音信普通で破門になった場合は、その後に、音信不通になった際の明確な原因について何かきちんとした言い分があって、組に理解されれば、復帰することはできる。だから、彼は、単独でやったんでしょう。自ら音信不通になった理由がこれだったのかと後でわかれば、彼が逮捕されて刑期を務めた後に、破門が解除される可能性があります。組の指示による偽装破門だった場合は、音信不通を原因とはせずに、言ってみれば原因不明の破門にされて、そのことがサインのようになって周囲に伝わるわけです。そういうふうにしないと、自分が現役だった頃は、襲撃がバッティングする(身内の別班が動いてしまう)可能性がありましたから」と話した。
(文=藤原 良)

 山口組の本拠地ともいえる神戸市内で、任侠山口組、神戸山口組、そして、六代目山口組と、三つの山口組が存在するようになってから、初の射殺事件が起きた。そもそも、どうして山口組は三つに別れてしまったのだろうか?

 藤原良氏の『三つの山口組』(太田出版)には、山口組が三つになったその一部始終が克明に記されている。多くの謎を解き明かす『三つの山口組』は、ご興味のある方にとっては一読必須の価値ある内容に仕上がっている。

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『三つの山口組 ーー「見えない抗争」のメカニズム』

(著:藤原 良)

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