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三井不動産がニューヨーク最大級ビル建設、報じられない巨額損失リスク…三菱地所の悪夢

文=編集部

英国ロンドンでは巨費を投じて再開発事業

 米国のプロジェクトへの参画は、三井不動産が掲げるグローバル事業「イノベーション2017ステージ2」の一環だ。15年度から18年度までの3年間に、海外事業へ5500億円を投資し、海外事業の利益を300億円以上、海外事業の資産比率を12%程度にするとの目標を掲げている。17年3月期の実績では、海外事業の営業利益は159億円、海外資産は5570億円で、海外事業の資産比率は12.7%で目標をクリアした。今後は、収益を上げることが課題だ。

 他方、英国では15年から英国放送協会(BBC)の跡地でマンションやオフィス、ホテルなどの複合施設の開発を進めている。世界有数の金融街であるロンドン・シティの中心地でのプロジェクトで、敷地面積は東京ドームの2.6個分、総事業費は4000億円に上る。ロンドンにおける日系企業の都市開発としては最大規模だ。

 三井グループの源流「越後屋」発祥の地・日本橋は、かつては日本の文化、経済の中心地として栄えた。だが現在は、老舗が軒を並べるが、往時の賑わいは消えた。IT(情報技術)などの新興企業は、六本木や渋谷に集まる。そのため、日本橋は一時期、「黄昏の街」などと揶揄されたほどだ。

 そこで三井不動産は、日本橋に活気を取り戻そうと立ち上がった。官民一体になった「日本橋再生計画」が大きく動き出し、日本橋に新規来街者が増えてきた。日本橋再生計画の成功で自信を深めた三井不動産は、英国と米国で大型投資に踏み切ったのだ。海外での大規模プロジェクトへの参画は、グローバル企業へと飛翔するための試金石となるだろう。

三菱地所の二の舞になる懸念

 そんな三井不動産の海外投資は、バブル期の三菱地所を彷彿させる。

 89年10月31日、三菱地所はロックフェラー・センターの持ち主、ロックフェラー・グループ社(RGI)の株式の51%を約1200億円で取得すると発表した。

 高層ビルが立ち並ぶロックフェラー・センターは、米国の富の象徴でありニューヨークの名所でもある。ニューヨークを紹介する時に必ず出てくるのが、世界一大きなクリスマスツリーが飾られ、冬はスケートリンクが開設されるロックフェラー・センターだ。

 そのため、三菱地所による買収でニューヨークに衝撃が走った。日本で例えれば、三菱地所のシンボルだった丸の内ビルディング(丸ビル)を韓国企業が手に入れたようなものだ。

 ニューヨーク・タイムズは一面で「日本人がニューヨークの記念碑を買収」と大きく取り上げた。テレビのニュース番組は、ソニーによるコロンビア映画の買収と合わせてロックフェラー・センターの買収を繰り返し報じた。なかには、ゼロ戦(三菱零式戦闘機)が登場する映画のワンシーンまで流し、対米侵攻のイメージとだぶらせようと意図する番組もあった。

 三菱地所は1200億円で買収すると発表したが、この金額では収まらなかった。円高と国内の土地の急騰で、「三菱地所は米国へ投資したがっている」と足元を見透かしたRGIは、交渉過程でどんどん金額を吊り上げたのだ。

 そのため、三菱地所は91年までに株式を買い増し、RGIの株式の80%を買い取るハメになり、最終的な買収額は2200億円に上った。当初より1000億円も上積みしたことになる。

 ところが、米国不動産市況の悪化で賃料は暴落。三菱地所が買った物件は利益が出ない劣悪なものに成り下がった。そして95年5月、三菱地所はRGIの破産を申請し、ロックフェラー・センターから撤退。96年3月期決算で1500億円の特別損失を計上した。

 三井不動産の投資額は、三菱地所がRGIを買収した価格の1.8倍だ。三菱地所の二の舞になる懸念は消えない。
(文=編集部)

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