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かつてのヒーローたちが大集結の実写版『亜人』、原作からの改変で映画らしい映画に

文=増當竜也
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 また永井の病弱な妹・慧理子の設定も、原作では永井と心の壁で隔たれてしまっているのに対し、今回はその奥にしかと結ばれている兄妹の絆を強調させている。ただしいくら佐藤の魔の手から救うためとはいえ、入院中の彼女を連れて逃避行の旅に出るというくだりは、映画を見ている限りではやや説得力に欠ける感は否めないのだが、慧理子を演じるのが今年『咲』や『君の膵臓を食べたい』で要注目の新進・浜辺美波なので、出番が多くなった分だけ個人的には許容範囲ではあった。

 一方、国家権力側の戸崎役の玉山鉄二は原作から飛び出してきたかのようにぴったりだったが、その部下で実は亜人の下村泉役の川栄李奈はちょっと鋭さに欠けたか(とはいえ、クライマックスではかなり体を張って頑張っているので、好感度は高い。IBM“クロちゃん”を出すときのかけ声も良かった)。

 昨今SNSの炎上などを恐れて、原作に忠実な実写化を試みる向きが多く(それは実写版『進撃の巨人』2部作が大失敗して、原作ファンからも映画ファンからもバッシングされたことの悪影響のようにも思えるが)、逆に忠実すぎてもっと映画ならではの独自性が委縮されてきているきらいも感じられているだけに、今回の試みは賛否があることだろうが、それが“原作ものの映画化”だということを良い意味で原作ファンに強く意識させることに繋がるような気がしている。

 実際、原作の主人公・永井はクールで現実主義者であまり感情移入できるキャラクターではないのだが、その意味で少し大人になった(?)彼を演じる佐藤健も心の荷が重かったようにも思えるが、綾野剛との壮絶なコンビネーションによって、その肉体を駆使したアクションシーンなどで存在感を発揮しているのも映画ならではの魅力となっている。

 それぞれの亜人が分身として外に放つIBM同士のバトル描写も、今のCG技術あればこそで、こういった描写がようやく日本映画でもお目にかかれるようになったという感慨は大きい(ちなみに永井のIBMの声は、アニメ版で永井を演じた宮野真守が担当)。

 といった具合に、例によって原作ファンの間で賛否の渦が巻くのは必至ではあろうが、私自身は今回の実写映画、大いにマルであった。

 佐藤の仲間たちに、舞台ミュージカル『美少女戦士セーラームーン』(03年)のタキシード仮面役で俳優デビューを果たした城田優や、『天装戦隊ゴセイジャー』(10年~11年)の千葉雄大、『海賊戦隊ゴーカイジャー』(11年~12年)山田裕貴などヒーロー出身俳優を集めているのもユニークなキャスティングだが、よくよく考えると佐藤健は『仮面ライダー電王』(07年~08年)、綾野剛は『仮面ライダー555』(03年)や『ガッチャマン』(13年)、玉山鉄二は『百獣戦隊ガオレンジャー』(01年~02年)と、実はみんなヒーロー系俳優ではないか! その手の作品のファンとしては思わずニンマリしてしまったのと同時に、そういったジャンルを支えてきた若手たちが今の日本映画界を担う存在になってきていることもうれしく思う次第である。
(文=増當竜也)

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