
柴咲コウが主演するNHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』の第39回が1日に放送され、平均視聴率が前回と同じ11.7%だったことがわかった(関東地区平均、ビデオリサーチ調べ)。
今回は、今作における主人公が直虎(柴咲)から、後の井伊直政となる虎松(菅田将暉)へと実質的に交代した回と言ってよい。直虎はもはや「元領主」でしかなくなり、井伊家の人々や村人たちからは敬意をもって扱われているものの、自らの影響力で何かを成しえる力はない。井伊に替わって領主となった近藤(橋本じゅん)を巧みに操って井伊谷を豊かな里にしていたという描写もあったが、ドラマにおける直虎の存在意義を保たせるための、少々不自然な主人公アゲとなってしまった感もぬぐえない。
だが、豊かな里の様子を見た虎松はその功績が直虎によるものだと知り、井伊の当主としてこの里を治めたいとの思いに火がついてしまう。そこで一計を案じ、養子に行った先の松下家の嫡男としてではなく、井伊家の虎松として仕えたいと家康(阿部サダヲ)に願い出た。井伊家に負い目を感じていた家康は虎松に井伊万千代の名を与え、小姓として仕えることを認めたが、家臣たちの忠告で考えを翻す。そして、徳川家家臣の松下姓を名乗るなら小姓として取り立てるが、井伊姓を名乗るなら草履番として仕えることになると二者択一を迫った。どうしても井伊の家名を取り戻したい虎松は「日本一の草履番を目指す所存にございます」と屈辱を受け入れた――という展開だった。
井伊万千代は後に徳川四天王・井伊直政として名をはせることになるが、その少年時代を菅田がどう演じるのかに注目していた視聴者も多いことだろう。筆者も今回はそれを一番の楽しみにしていた。結論から言うと、少々顔芸がうるさいものの、後世に伝わる直政の人物像から逆算するとまあまあしっくりくる演技だったと評価したい。
井伊の姓を名乗ることを家康に認めてもらおうとの野望をしっかりと胸に隠し、周囲の人々をことごとく欺いた上でキーパーソンとなる南渓(小林薫)だけはしっかりと利用するずる賢さは、これまでの井伊家・歴代当主が持ち合わせていなかった資質だ。菅田が演じた万千代像からは、ただ賢いだけでなく少々の腹黒さも持ち合わせ、なおかつ自分が賢いことを多少鼻にかけている感じが伝わってくる。