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宮永博史「世界一わかりやすいビジネスの教科書」

138年ぶりにそろう奇跡の名画三部作をみて、アップルがどれだけスゴいかを認識した

文=宮永博史/東京理科大学大学院MOT<技術経営>専攻教授

 2番目に描かれた「吉原の花」は本物がアメリカ東海岸コネチカット州から、はるばる海を越えて箱根にやってきた。解説を読まないとわからないのだが、上半分の女性たちは武家の女性たちだ。しかも、なかには徳川家の紋が入っている着物を着ている女性もいる。当時、寛政の改革で江戸の人々は我慢を強いられていた。この絵は、つい最近まで武家の女性たちも派手に遊んでいたではないかという、幕府に対する痛烈な皮肉でもある。下半分には芸者たちがあふれんばかりに描かれている。絢爛豪華ではあるが、「深川の雪」に比べてやや登場人物が過密に感じられる。

 その点、「深川の雪」は実にバランスがいい。舞台は深川の料亭だ。その2階、雪の積もった中庭を囲むように廊下があり、そこに実に豊かな表情の女性たちが描かれている。一人ひとりの表情も他の絵に比べてはるかに豊かに描かれている。まさに喜多川歌麿の最高傑作といってよいだろう。個人的にも「深川の雪」が最も好きだ。3年前に見たときも感動したが、三部作の中で「深川の雪」を見ると改めて、その良さが伝わってきた。

三部作とヒット3連発

 喜多川歌麿の三部作と比較するのはやや気が引けるが、ブランドづくりの基本に「ヒット3連発」という考え方がある。ヒット商品を放っても、あとからきた創造的模倣者に追い抜かれ、一発屋で終わってしまってはブランドとならない。ヒット商品を3連発成功させて初めて、そのカテゴリーでブランドができるという考え方だ。

 歌麿の三部作を見ていても、一つひとつの絵は大作であることに間違いないが、やはり三部作であることに意味があるように思う。それも、最後の作品が最も完成度が高い。商品やサービス、あるいはプラットフォームも、歌麿の三部作のようにヒットを連発することで磨きがかかり、ブランドを構築していくというのが間違いないだろう。

 アップルがパソコンメーカーから脱却し、現在のようにiPhoneやiPadまで幅広い事業を展開するきっかけとなったのはiPodの発売からだ。最初のiPodはマッキントッシュ専用のデジタルオーディオプレーヤーとして01年10月23日に発表された。マッキントッシュ専用だったのは、iPodがマッキントッシュの販売促進の「おまけ」として開発されたからだ。つまり、魅力的なiPod欲しさに、マッキントッシュを買ってくれるのではないかと考えたようだ。

宮永博史/東京理科大学大学院MOT<技術経営>専攻教授

宮永博史/東京理科大学大学院MOT<技術経営>専攻教授

東京理科大学大学院
経営学研究科 技術経営(MOT)専攻教授。東京大学工学部・MIT大学院修了。NTT、AT&T、SRI、デロイトトーマツコンサルティング(現アビームコンサルティング)を経て2004年より現職。主な著書に『ダントツ企業』『顧客創造実践講座』『世界一わかりやすいマーケティングの教科書』『幸運と不運には法則がある』『理系の企画力!』『技術を武器にする経営』(共著)、『全員が一流をめざす経営』(共著)、『成功者の絶対法則 セレンディピティ』などがある。

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